令和4年4月完全義務化!原料原産地表示制度の概要
皆様こんにちは。
HACCPコーディネーターの石田です。
食品表示基準の改正・施行により、令和4年4月より加工食品の原料原産地表示制度が義務化になります。
事務所で食べ物の話をする際にも、よく「これどこ産?」など食品の産地が話題になるんですが、皆様は産地など気に
されますか?
食品の産地は購入動機の一つにもなる重要な情報です。
生鮮食品には農産物・水産物・畜産物とそれぞれルールは異なるものの「名称」「原産地」を記載しなければなりません。
少し前まで、加工食品には原材料の産地が記載されていなかったことはご存知でしょうか?
よく考えると、加工食品の産地はどこなんだろう?と気になりますよね。
消費者の希望に応える形で、令和4年4月加工食品の原料原産地表示制度の完全義務化が始まります。
この記事では、食品表示や新制度での表示ルールを解説しています。
原料原産地表示制度は消費者にとって有益な制度なので、この記事を読んで普段の生活にご活用頂ければと思います。
目次
スーパーで食品を購入する際に何に気を付けていますか?
・賞味期限や消費期限
・量や価格
・産地
・鮮度
などでしょうか。
スーパーなどの小売店で販売される食品に食品表示がされているのは、ご存じかと思います。
普段、なんとなく見ている食品表示ですが、様々なルールがあります。生鮮食品と加工食品でも表示方法が違いますよね。
今回は加工食品の表示方法に注目していきます。
※食品表示法については以前のコラムをご参照ください。
加工食品とは、食品になんらかの加工を施したものであり、その種類、分類は多岐にわたります。主な加工食品は以下の
通りです。
(1)冷凍食品
食材に前処理を施し、急速に凍結させて包装した規格商品です。
―18℃以下で食品管理することによって、保存料なしで1年間品質を保てることなどが冷凍食品の要件です。
(2)チルド食品
―5℃~5℃の温度帯で流通販売される商品です。
(3)真空調理食品
生または前処理された食材をフィルムで真空包装した後、加熱、急速冷却を施した食品です。1979年にフランスで開発された保存方法です。最近では家庭でも真空保存ができる機械が販売されていますね。
(4)レトルトパウチ食品
カレーやシチューなど調理済みの食品を密閉し、加圧熱殺菌釜の中で高圧加熱殺菌した食品のことです。
(5)インスタント食品
熱湯、水、牛乳などを注ぐだけですぐ食べられる食品です。コーヒーやラーメン、即席みそ汁など生活に馴染み深い商品です。
(6)水産練り製品・ソーセージ
魚肉・畜肉などに食塩を入れ、すりつぶし、のり状にして加熱した食品です。
(7)菓子類
典型的な加工食品で、和菓子・洋菓子・スナック菓子など種類が豊富です。
他にもカットされたニンジンのみであれば、「生鮮食品」ですが、カットされたニンジンとキャベツを混ぜている場合は
「加工食品」になりますし、タケノコも茹でたものは「加工食品」に分類されます。
「加工食品」と「生鮮食品」では食品表示のルールが異なるので、注意が必要です。
加工食品の表示項目は以下の6個です。
①名称:内容物を表す一般的な名称(商品名とはまた別です)
②原材料名:原材料と添加物を区別し、それぞれ重量の多い順にすべて表示する
③内容量:重量(g・㎏)、体積(㎖・ℓ)または数量(個数・枚数)で表示する
④期限:消費期限か賞味期限
⑤保存方法:〇℃以下、直射日光を避けるなどの保存方法を表示する
⑥製造者等:製造者、加工者、販売者などの氏名、住所を表示する
表示項目ではやっぱり、原材料を見ることが多いですね。
何で作られたものなのかというのはとても重要な情報です。
原料原産地表示制度とは、加工食品に使用された原材料の原産地を商品に表示する制度のことです。
消費者は加工食品の原産地も知りたがっています。
調査によると、7割以上の消費者が「食品購入時に、原料原産地表示を商品選択の参考にする」と答えています。
このような経緯から、政府は、食品表示法の改正を検討しました。
平成28年6月の閣議決定で、国内で製造した全ての加工食品を原料原産地表示制度の対象とすることが決まり、
平成29年9月に食品表示基準が改正・施行されました。
令和4年3月31日までは食品メーカー等の準備をするための猶予期間とされており、令和4年4月1日から完全義務化が
スタートするというわけです。
表示義務の対象は、
「国内で製造した全ての加工食品」です。
今まで、一部の加工食品にしか義務付けられていなかった食品表示が、全ての加工食品に義務付けられます。現状、酒類に
原材料名の表示義務はありませんが、4月からは表示が必要となります。
①輸入食品
国外で製造された食品は対象外となります。
「原産国名」の表示は必要ですが、原料原産地名の表示は必要ありません。
②外食、店内販売
外食や加工した場所で販売する場合は、対象外です。
例えば、飲食店で飲食する際や、街中のタコ焼きさんで購入したタコ焼きなどは、密閉できる容器包装に入れず販売している
ため、対象外となります。
また、被災地などの炊き出しなども不特定または多数の者への譲渡にあたるため、対象外となります。
③表示可能面積がおおむね30平方センチメートル以下の場合(総菜、お弁当など)
原料原産地名の表示を省略できます。
新たな原料原産地表示制度は、原材料に占める重量割合が一番重い原材料について産地を表示することとしています。
対象原材料が加工食品の場合は、中間加工原材料の「製造地」を表示します。
※中間加工原材料とは
2種類以上の原材料からなる原材料です。
例えば、「ポテトのマヨネーズ焼き」という加工食品に使用する食材は、
・ジャガイモ
・マヨネーズ
です。ジャガイモとマヨネーズは原材料になります。
ジャガイモは生鮮食品ですが、マヨネーズは食用油、酢、卵で作られた加工食品です。この場合のマヨネーズを中間加工原材料と言います。
2位以下の原材料は表示しなくても良いのでしょうか?
表示しなくても違反にはなりません。
しかし、事業者が自主的に原料原産地表示をすることは可能です。
具体的な表示例は以下の通りです。
例①:産地を表示する必要がある原材料が生鮮食品の場合
名称 ウィンナーソーセージ
原材料名 豚肉(カナダ産、アメリカ産、その他、豚脂肪、たんぱく加水分解物・・・)
例②:産地を表示する必要がある原材料が加工食品の場合
名称 清涼飲料水
原材料名 りんご果汁(ドイツ製造)、砂糖・・
産地を表示する必要がある原材料が生鮮食品の場合、「国産」「アメリカ産」と産地を表示します。原材料が加工食品の場合は、「国内製造」「タイ製造」と表示されるというわけです。
原材料の産地が2以上の場合は、使用した重量の順に国名を表示します(国別重量順表示)。
尚、原材料の原産地が3以上の場合は、3か国目以降の原産地は「その他」と表示します。
「国別重量順表示」が難しい場合には、根拠書類の保管など一定の条件の下で、「又は表示」や「大括り表示」が認められて
います。「又は表示」と「大括り表示」の2つを「例外表示」といいます。
●「又は表示」
「又は表示」とは、原産地として使用可能性がある複数国を、使用が見込まれる重量割合の高いものから順に「又は」でつないで表示する方法です。
使用が認められるのは、過去の一定期間における産地別使用実績、又は今後の一定期間における産地別使用計画からみて、国別重量順表示が困難な場合です。
●「大括り表示」
「大括り表示」とは、3か国以上の外国の原産地表示を「輸入」と括って表示する方法です。輸入品と国産品を混合して使用する場合は、輸入品と国産品との間で、重量割合の高いものから順に表示します。
使用が認められるのは、過去の一定期間における産地別使用実績又は今後の一定期間における産地別使用計画からみて、国別重量順表示が困難な場合です。
例外表示は根拠書類の提出や資料作成などの準備が複雑なので、食品メーカーは例外表示の導入をためらいがちです。
そのため、現状では店頭で例外表示されている食品は、全体の1割にも満たない状況となっています。
(令和2年度 新たな加工食品の原産地表示制度等に係る表示実態調査結果)
加工食品の食品表示は消費者の「原産地を知りたい」というニーズに応えたものです。
しかしながら、表示方法は複雑で、かつ情報量が多いため、消費者が表示を読み解くのは困難です。
例えば、製造地表示です。
「そば粉(長野県製造)」とあっても、原料のそばの産地は「中国産」かもしれません。製造地表示はあくまでも「製造した
場所」であり、原料の原産地の表示を指すものではないことを消費者は知っておくことも必要でしょう。
まだまだ、食品表示の理解度は低いとは思います。
この記事が、少しでも新たな加工食品の制度の理解に繋がり、食品表示を有効に利用して頂けるきっかけとなりましたら
幸いです。
find a way 法律事務所
HACCPコーディネーター 石田 香玲