テイクアウト・デリバリーの食中毒を回避する衛生管理方法 - 大阪市で労使、飲食、M&Aに関する相談は「findaway法律事務所」へ

 

テイクアウト・デリバリーの食中毒を回避する衛生管理方法


皆様こんにちは。

HACCPコーディネーターの石田です。

 

日本では、2020年1月16日に新型コロナウィルスの最初の感染者が確認されました。

瞬く間に、新型コロナウィルス感染症は世界を一変させました。

 

 

感染リスクを回避するため外出が制限され、リモートワークや、リモート学習の導入が進みました。外食機会が激激し、大人数での会食や友人との宴会なども開催しにくくなりました。

 

 

「3密(密閉空間・密集場所・密接場面)」を避けることが世の中的に当たり前になり、飲食業界では、テイクアウト・デリバリーのサービスが急激に増加しました。

 

お店でしか飲食できないのではなく、自宅でもお店の味を楽しめる!

消費者にとってはとてもありがたいことですが、テイクアウト・デリバリーよる食中毒事故が増加しているのはご存じですか?

 

 

今回は最新のテイクアウト・デリバリーの衛生管理について解説します。

 

1 新型コロナウィルス拡大以降の食中毒発生状況

 

厚生労働省が公表している「年次食中毒発生状況」をみると、新型コロナウィルス拡大以前、食中毒事故件数は年間1,000件前後を推移していました。

 

しかし、新型コロナウィルスの影響を受け、令和2年食中毒事故件数887件と直近20年の中で最も少ない件数となりました。

 

最も少ない件数となった要因は以下の通りです。

 

・外食機会が大幅に減ったこと

・手洗い、うがい、消毒、マスクが日常生活に浸透したこと

 

飲食店の営業時間が短縮されていたため、ご飯を食べて帰りたくてもお店が開いていなくて、飲食店の利用回数は減少しました。

 

手洗い・うがい、消毒、マスクなどの感染症対策はノロウィルス対策としても効果があり、結果として食中毒発生の大幅な減少に繋がりました。

 

食中毒発生件数が減少傾向の中、飲食店で販売した弁当による食中毒が増加傾向にあります。

患者数が50人を超える大規模な事故も発生しているので注意が必要です。

 

 

 

 

2 テイクアウト・デリバリーの特徴

 

テイクアウト・デリバリーは、通常の店内喫食に比べ以下の点で、食中毒リスクが高まります。

 

・調理・販売から喫食するまでの時間が長い

・通常と異なる調理方法や仕込みをする場合がある(大量調理や前日調理など)

・夏場など暑い時期は温度管理が難しくなるなど、季節による影響を受けやすい

・お客様に販売後、飲食店が指定した温度管理や保存方法が守られない可能性がある

 

店内喫食と違い、テイクアウト・デリバリーは、料理を作ってからお客様の口に入るまでにかなりの時間を要します。

 

テイクアウト・デリバリーの衛生管理は、食中毒予防の3原則である、

「菌を付けない・増やさない・やっつける」の「増やさない」がポイントです。

 

 

そのため、通常の店内喫食以上に、衛生管理の徹底が必要になってきます。

 

 

コロナ禍で急遽、持ち帰りや宅配食品を始めた飲食店での食中毒事件の発生が増加傾向にあることから、厚生労働省より注意喚起のリーフレットが各自治体に示されています。

 

食中毒のリスクを回避するための衛生管理とはどのようなことなのでしょうか?

 

 

 

 

3 食中毒のリスクを回避するための衛生管理

 

食中毒のリスクを回避するためには、原材料の受け入れから販売、お客様の喫食までに5つのポイントで衛生管理を行いましょう。

 

(1)食品取扱者の衛生管理

 

食品取扱者は日々の健康管理が重要です。

 

勤務前日にお腹を下していたのに、明け方には治っていたとします。原因はわかりませんが、下痢などの症状が治まっても菌を

保有している可能性があります。菌が調理の段階で食材に付着し、感染が拡大することも十分に考えられるため、体調不良の際は食材を扱う業務に従事しないようにしましょう。

 

手荒れや手に傷がある場合は、手指に黄色ブドウ球菌が繁殖しています。

また症状がなくとも、ノロウィルスを保菌している場合もあるので、素手で食品に触れることの無いようにしましょう。

 

 

 

 

(2)作業場所の衛生管理

 

二次汚染を防ぐため、弁当など容器を並べて盛り付ける際は、作業場所に十分注意しましょう。

 

「非加熱のもの」と「加熱済のもの」が混合しないよう、できる限り作業場所を区分けしましょう。作業開始前後には作業場所にアルコール消毒を噴霧するようにしましょう。

 

 

 

 

(3)食品の取り扱いとメニューの選定

 

テイクアウト・デリバリーには適しているもの、そうでないもの食材があります。

お店で提供しているメニューが持ち帰りや宅配に適しているとは限りません。

特に「適していない食品」は以下の通りです。

 

【適していない食品】

・刺身やカルパッチョ

・卵が半熟のオムレツなど

・レアステーキ

・加熱(焼く、煮る、炙る、茹でる、蒸す等)されていない食品

 

加熱されているから大丈夫ということではありません。

食中毒菌は時間の経過とともに増殖します。特に高温多湿な夏季(6~9月)は温度管理が難しくなります。

 

調理後、できるだけ早めに食べてもらえるよう、不要な作りおきはせず、新鮮なものを注文ごとに調理するようにしましょう。

 

 

 

 

(4)記録の保管

 

衛生管理では、「計画」「実施」「記録」というサイクルを実施することが大切です。

 

特に、記録として残すと良いものは以下の通りです。

 

・製品情報の記録(製品規格書やレシピなど)

・一般衛生管理実施記録(従事者の衛生管理、冷蔵冷凍庫の温度)

・作業中の危害管理記録

(食材の仕入れから完成した食品の提供・販売までの工程で、どのような危険があり、どのように調理し、どのように管理したかなど)

 

 

改正食品衛生法により2021年6月から導入が義務化されたHACCPに沿った衛生管理でも、「記録の重要性」は述べられています。

 

テイクアウト・デリバリーでは調理から喫食まで時間が経過しており、飲食店ではない場所でお客様が喫食します。

そのため、調理状況や危害要因を記録しておくことが特に重要です。

 

 

 

 

(5)情報提供

 

飲食物を扱うお店では、お客様に適切な情報を提供しなければなりません。

 

提供する際、必要な情報は以下の通りです。

①原材料(特にアレルギー食材)

②消費期限

③保存方法

 

 

原材料は、アレルギーがある人にとって命に関わる大切な情報です。

 

また、消費期限も食中毒事故に関わる大切な情報です。間違いが起きないように、わかりやすい表示シールを添付したり、販売時に「購入後はお早めにお召し上がりください」「保存状態に気をつけてください」など購入者に直接、声掛けを行うようにしましょう。

 

加工食品には食品表示が必要です。

食品表示については、以前のコラムをご参照ください。

 

 

 

 

4 テイクアウト・デリバリーの食品表示

 

飲食店でテイクアウト・デリバリーのサービスを始める際には、新たに営業許可の取得が必要かの確認をしましょう。

 

 

(1)新たに営業許可が必要ない場合

 

飲食店営業許可施設で通常提供しているメニューを、すぐの喫食を前提に、お客様からの注文ごとに調理をする場合は、新たな許可は必要ありません。

 

 

 

(2)新たに営業許可が必要な場合

 

・あらかじめ大量に製造、保存されており、宅配など飲食店施設以外の場所で販売されるお弁当や総菜

・真空パックにして販売する場合

・酒類の販売(料飯店等期限付酒類小売業免許は、2021年3月末をもって終了)

・ハムやソーセージの販売

・生肉の販売

 

適正な営業許可を得ずに営業し、食中毒を発生させた場合、「許可条件違反」「食中毒発生」など、食品衛生法違反になります。

新たにテイクアウト・デリバリーを始める際は、営業許可が必要かどうか管轄の保健所に相談すると安心ですね。

 

 

 

 

5 まとめ

 

食中毒事故はここ数年、コロナ禍が大きく影響し、減少傾向にあります。

今後、まだ数年はかかりそうですが、コロナ禍も収束していくでしょう。アフターコロナに対応していくため、持ち帰り・宅配食品の安全な運用が重要です。

 

テイクアウト・デリバリーを安全に運用していくためには、HACCPの導入が効果的です。

当事務所では、細菌・ウイルスや食品衛生に精通したHACCPコーディネーターによるHACCP導入支援を行っております。

 

HACCP導入にお困りの方はお気軽にお問い合わせください。

 

 

find a way 法律事務所

HACCPコーディネーター 石田 香玲