【特商法】電話勧誘販売を避ける具体的方法
弁護士・中小企業診断士の荒武です。
以前、「電話勧誘販売を避けるべき3つの理由」というニッチな記事を掲載しました。
電話勧誘販売を避けたほうがよいのは、特定商取引法(特商法)の規制が特に厳しいからです。
「通信販売」の一部が「電話勧誘販売」として、特に厳しい規制を受けるというイメージです。
そのため、「電話勧誘販売」ではなく、「通信販売」に収まるような販売スキームを設計すればよいのです。
今回は「電話勧誘販売を避ける具体的方法」をより掘り下げて解説します。
目次
電話勧誘販売とは、電話で勧誘して販売することです。
事業者から電話をかける場合が含まれるのはもちろんですが、一定の方法で「電話をかけさせる」場合も電話勧誘販売に含まれます。
以下の2つの方法で「電話をかけさせる」場合に、電話勧誘販売になります。
①販売するという目的を伝えずに電話をかけさせる方法(目的秘匿型)
②他の方よりも有利な条件で契約できると思わせて電話をかけさせる方法(有利条件型)
10年くらい前まで、顧客リストにテレアポで発信して商品・サービスを販売するという手法がよくありましたが、最近ではあまり見かけません。
現在では、上記①②の方法で、電話をかけてもらって契約する場合に規制を受けることが多いでしょう。
以下では、事業者が自ら電話をかけないことを前提に、どのように電話勧誘販売を避けるか、順に解説します。
「電話をかけさせる」と書いていますが、商品を案内する方法は「電話」に限りません。
消費者庁の運営する特定商取引法ガイドにも、以下のような記載があります。
有線、無線その他の電磁的方法 によって、音声その他の音響を送り、伝え、又は受けるものである限り、スカイプ等 インターネット回線を使って通話する IP 電話等も「電話」に含まれる。
ここでは、スカイプが例に挙げられていますが、この電話の定義によるとZOOM等のオンラインミーティングも「電話」にあたります。
最近、よく見かける以下のようなスキームも「電話をかけさせる」ことになります。
① instagram、twitterで情報発信して、LINEアカウントに誘導する
② LINEで無料のZOOM相談に誘導する
③ ZOOM相談で有料の商品を案内して、契約する
先ほど挙げた、①から③の手順で集客すること自体は全く問題ありません。
電話勧誘販売になるか、通信販売になるかは、ZOOM相談に誘導するLINEにどのように書くかで決まります。
要は、
①販売するという目的を伝えずに電話をかけさせる方法(目的秘匿型)
②他の方よりも有利な条件で契約できると思わせて電話をかけさせる方法(有利条件型)
を避ければ、電話勧誘販売にはならないのです。
①販売するという目的を伝えずに電話をかけさせる方法(目的秘匿型)から説明します。
この対策としては、シンプルに、販売するという目的を伝えればよいのです。
LINEやWEBサイトには、以下のように、はっきり書いておきましょう。
「ZOOM面談では、●●サービスの有料プランについてご案内させていただきます。」
次に、②他の方よりも有利な条件で契約できると思わせて電話をかけさせる方法(有利条件型)について、説明します。
「先着●名様限定!!」
「今月だけのオファーです」
これらの記載があると、「他の人よりも有利な条件で契約できる」と思いますね。
そのため、これらの記載を入れなければOKです。
LINEの案内や、Webサイトの記載を調整して、電話勧誘販売から通信販売に寄せることは脱法的な行為ではないか?
決して、そんなことはありません。
そもそも、①②のような方法で電話をかけさせた場合に電話勧誘販売にあたるとされている趣旨は、「無料だ!お得だ!」などの甘い言葉で消費者の判断力を惑わせて契約させた場合には、消費者を手厚く保護しようということです。
ということは、事前に「有料の商品をお勧めしますからね」と伝えていた場合、消費者はそのつもりでZOOM面談に臨みます。
また、「他の人より有利になる」という条件を見せられずに、ZOOM面談を申し込んでくれる方は、特別扱いされなくても、その商品・サービスに興味を持ってくれた方です。
そのため、通信販売に寄せた場合、自社の商品・サービスの魅力でお客様を惹きつけたのだと自信を持ってよいのです。
「先着●名様限定!!」
「今月だけのオファーです」
この記載を無くすと、顧客の流入が激減するという方もおられるでしょう。
そうであれば、この記載を残し、電話勧誘販売の規制を受け入れるという選択もあります。
当事務所に寄せられたご相談でも、総合的に判断して「では、電話勧誘販売でいきましょう」という前提でWEBサイト等の文言を整備することもあります。
電話勧誘販売を回避した結果、通信販売としての規制を受けることになります。
特商法の規制を免れるわけではないので、注意しましょう。
通信販売に対しては広告の規制があります。
また、法定返品権という返品制度もあります。
法定返品権はクーリングオフと異なり、事業者の裁量が広くなっています。
通信販売に対する規制については、別の機会にあらためて解説します。
電話勧誘販売を回避したにもかかわらず、クーリングオフの通知が届くことはあります。
この場合、
・顧客の支払方法(振込、クレジットカード)
・顧客の属性(事業者か否か)
・弁護士が就いているか、本人からの請求か
によって、対応がことなります。
振込みによって代金全額の支払いを受けている場合、対応しやすいです。
目的秘匿型でも、有利条件型でもないという具体的な根拠を示しつつ、クーリングオフには応じられない理由を丁寧に説明しましょう。
誠実に対応しないと、消費者センターに通報されたり、インターネット上で誹謗中傷されたりすることがあります(誠実に対応しても誹謗中傷されることはあります…)。
クレジットカード決済の場合、チャージバックのリスクがあります。
チャージバックについては、以下の記事をご参照ください。
カード会社や決済代行業者から取引を拒否されるリスクを避けるため、返金に応じるという選択肢もあります。
顧客が事業者の場合、そもそも特商法が適用されません。
顧客が「営業のために若しくは営業として」契約する場合には、電話勧誘販売かどうかの以前に、そもそも特商法が適用されないのです。
法人はもちろん、個人事業主であっても「営業のために」契約する場合は、特商法の適用除外です。
ただし、「そろそろ副業でもしようかな」くらいの顧客は、「営業のために」には該当しません。
見極めが微妙な場合は弁護士に相談しましょう。
弁護士から、「クーリングオフするから返金しろ」という内容証明郵便が届くことがあります。
これを無視するのは非常に危険です。
なぜなら、弁護士にお金を支払って依頼している場合、顧客もそれなりに本気だということです。
無下に扱うと、次は訴状が届く可能性があるので、こちらも弁護士に相談したほうがよいです。
現実的対応としては以上のようなパターンがあります。
・根拠を示して反論し、返金をお断りする
・素直に全額の返金に応じる
・一定額を返金するという方向での合意を目指す
何らかの合意をする場合は必ず合意書を交わしましょう。
リスクがあるため、無視はいけません。
この記事では、電話勧誘販売を回避する具体的な方法について解説しました。
電話勧誘販売であることを理解した上で、有利条件型の提案をするのはアリです。
有利条件型の提案が必須ではないのに、特商法の理解不足が原因で、クーリングオフを受け入れざるを得ないということがないようにWEBサイトなどを設計しましょう。
当事務所では、
・販売スキームの適法性についての法律相談
・どのような販売形態を採用するべきかのコンサルティング
・特商法上の義務についての法的整備
・契約書面や特商法に基づく表示の作成
などなど、特商法に関する業務を取り扱っております。
また、弁護士が就任していない、本人によるクーリングオフ通知の対応(法的に考えてお断り可能な場合に限る)は顧問料の範囲内で行っております。
自社の販売スキームの適法性が気になる方は、問合せフォームまたは事務所LINEアカウントよりお気軽にお問い合わせください。
また、顧問契約についてのご相談、ご質問は無料で行っております。
特商法については以下の記事もご参照ください。
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弁護士・中小企業診断士 荒武 宏明