テイクアウト・デリバリーにおける必要な営業許可について - 大阪市で労使、飲食、M&Aに関する相談は「findaway法律事務所」へ

 

皆様こんにちは。HACCPコーディネーターの石田です。

 

今年の梅雨入りは驚くほど早くてびっくりでしたね。せっかくいい気候なのに出かけづらいです。。

そして新型コロナウィルスの感染拡大がおさまらず鬱々としてしまいます。

 

緊急事態宣言で、酒類の提供ができないことからテイクアウトやデリバリー販売を始められた飲食店も多いのではないでしょうか。そこで今回は急遽テイクアウト販売を始めるにあたり必要な営業許可などについてお話していきたいと思います。

 

テイクアウト・デリバリー特有の衛生管理上の注意点については、以下をご参照ください。

テイクアウト・デリバリーにおける衛生管理

 

1 許可が新たに要らない場合

 

基本的に、いつも出しているメニューをお客様のご注文により調理をし、温かいまますぐにお客様にお持ち帰り用として販売する場合には、飲食店営業許可さえあれば他に許可は必要ありません。

 

【このような場合は許可の必要がない】

(例)

・居酒屋で焼き鳥を注文し、持ち帰りにする

・寿司屋で、家族用に寿司を包んでもらう

・中華料理屋で餃子を持ち帰る

 

では、どのような場合に飲食店営業許可以外の新たな許可が必要になるのでしょうか。

 

 

 

2 別途許可が必要な場合

 

●調理業:飲食店営業,喫茶店営業

 

●製造業:菓子製造業,あん類製造業,アイスクリーム類製造業,乳製品製造業,食肉製品製造業,魚肉ねり製品製造業,

清涼飲料水製造業,乳酸菌飲料製造業,氷雪製造業,食用油脂製造 業,マーガリン又はショートニング類製造業,みそ製造

業,醤油製造業,ソース類製造業,酒類製造業,豆腐製造業,納豆製造業,めん類製造業,総菜製造業,缶詰又は瓶詰

食品缶詰製造業,添加物製造業,つけ物製造業,製菓材料等製造業,粉末食品製造業,総菜半製品製造業,調味料等製

造業,魚介類加工業,液卵製造業

 

●処理業:乳処理業,特別牛乳搾取処理業,集乳業,食肉処理業,食品の冷凍又は冷蔵業,食品の放射線照射業

 

●販売業:乳類販売業,食肉販売業,魚介類販売業,魚介類せり売営業,氷雪販売業,食料品等販売業,弁当等人力販売業
上記は別途許可が必要な業種です。

 

(1)調理品

 

店舗で調理したものをお客様にお持ち帰り頂くだけなら、飲食店の営業許可があれば足りると1でお伝えしました。しかし以下の場合は他に許可が必要になってきます。

 

【このような場合は許可が必要】

(例)

・そうざいを多めに作り、販売する場合→総菜製造業の許可が必要

 

・チャーシューなどを作り置きし、少しずつ販売する場合→食肉製品製造業の許可が必要

 

・調理した食品を冷凍処理し販売する場合→食品の冷凍又は冷蔵業の許可が必要

 

・ケーキや菓子類、パンなど→菓子販売業の許可が必要

 

・アイスクリーム→乳類販売業の許可が必要

 

 

ケーキや菓子類の販売許可は比較的有名な許可かと思いますが、総菜などを多めに作り販売することに許可が必要ということを認知している飲食店は少ないのではないでしょうか。

 

 

(2)仕入れ品

 

緊急事態宣言で店内で酒類の提供ができないことから、既に仕入れてしまった肉や魚を消化しきれず、持ち帰り用に販売をするようなケースも増えていると思いますが、そのような場合は飲食店の営業許可以外の許可が必要になります。

 

 

・焼肉店が焼肉セットを販売する場合→食肉販売業の許可が必要

 

・すし屋で持ち帰り用に手巻きセット(刺身)を販売する場合→魚介類販売業の許可が必要

 

・仕入れた食品をそのまま販売する場合→食料品等販売業の許可が必要

 

 

持ち帰り販売やデリバリーを新たに行う際は、営業許可や設備変更が必要になる可能性があるため営業所所在地を所管する保健所生活衛生監視事務所に予めご相談下さい。

 

 

(3)酒類

 

店内でお酒を提供するにあたって飲食店営業許可があれば事足ります。しかしながら、お酒をお持ち帰り用に販売するには、酒類販売業免許が必要になります。酒類販売業免許は保健所ではなく、管轄が「酒税法」という税金関連になるため、自店舗の所在地の所轄税務署になります。

 

*国税庁は新型コロナウィルス感染症に基因して在庫酒類の持ち帰り用販売等により資金確保を図るものについて、特別に令和2年4月から期限付酒類小売業免許の付与を行っていましたが、令和3年3月末をもって期限終了となります。ご注意下さい。

 

 

3 飲食店の食品表示について

 

食品の表示に関しては2015年4月1日から施行されました食品表示法と照らし合わせる必要があります。

*食品表示法は消費者の求める情報提供と事業者の実行可能性のバランスを図り、双方にわかりやすい基準とすることを目的に施行された法律です。

 

食品表示法の概要については以下をご参照ください。

食品表示法における生鮮食品・加工食品の表示のルール

 

飲食店がお客様の注文に応じて弁当を調製し、テイクアウト・デリバリーにて販売する分には食品表示は省略することができます。しかし、アレルゲンや消費期限、保存方法などの情報は販売時に伝えるようにしましょう。

 

一方、弁当をあらかじめ製造し、テイクアウト・デリバリーで販売する場合、表示の一部は省略することができますが、名称・アレルゲン・添加物・消費期限・保存の方法・製造所の所在地及び製造者の氏名又は名称等が必要となります。

 

 

 

4 食品の取り扱いについて

 

前回の記事の中でお伝えしましたが、テイクアウト・デリバリーは店内での飲食に比べて調理後から食べるまでの時間が長くなり、衛生管理にもより一層の注意が必要となります。以下の点にご注意下さい。

 

 

・食品の調理は普段の調理能力(設備、人的能力に応じた範囲)を超えないように注意し、食中毒予防の三原則に留意し、短時間で行う。

 

・調理後の食品は衛生的な場所、適切な温度で保管し、販売する。

 

・食べる時間を考慮し、配送時間が長時間に及ばないようにする。

 

・注文を受けてから調理し、提供・配達後は速やかに食べてもらうよう、口頭や容器へのシール等で伝える。

 

・販売時に購入者に対し、アレルゲン、消費期限(時間まで)、保存方法等の情報を確実に伝える。

 

・容器の破損等により食品が汚染されることがないよう適切に取り扱う。

 

・保冷車や保冷ボックスを用いるなど、食品の温度管理を徹底する。

 

 

 

5 まとめ

 

 

緊急事態宣言が案の定延長となり、感染者数も高止まりが続く中、飲食店舗様への営業自粛要請は中々解けません。非常に厳しい状態が続きます。

しかしこんな状況の中で食中毒という事故を起こしてしまったら身も蓋もありません。

正しい方法での販売、安全安心な食品の提供を行っていきましょう。