牡蠣を安全に食べる!?
皆様こんにちは。食生活アドバイザーの石田です。
少しずつ冬に近づいてきましたね。
冬と言えば、蟹!牡蠣!お鍋・・・と美味しいものがたくさんあります。
当事務所は食いしん坊ばかりですから、食は尽きない話題のひとつです。
そんな中で、今日は「牡蠣」に注目してお話していきたいと思います。
牡蠣と言えば、あたる・・・、食中毒のリスクがかなり心配ではあります。
でも食べたい! 安全に生牡蠣を食べる方法はあるのでしょうか?
目次
世界には100種類もの牡蠣がいます。
私たち日本人が普段食べている牡蠣は主に2種類で、真牡蠣(マガキ)と岩牡蠣(イワガキ)です。どちらも耳にしたことがある方が多いのではないでしょうか。
牡蠣と言えば冬よなぁと思われがちですが、そうなんでしょうか?
欧米では、「You should only eat oysters when there is an “r” in the month. (Rのつかない月は牡蠣を食べるな)」と言われています。
*Rのつかない月=5月~8月のこと
これは真牡蠣の産卵期が5月~8月で、冬よりも味が落ちるからというのが理由です。日本は夏でも美味しい真牡蠣が採れる産地があり、また最近では真牡蠣の品種改良が進んでおり、夏に旬を迎える岩牡蠣もあります。
簡単に真牡蠣と岩牡蠣の紹介をしていきたいと思います。
*牡蠣の紹介の前に・・・
三倍体や二倍体という耳慣れない言葉がでてきます。三倍体とは、染色体のセットが、基本となる数(生物種によって異なる)の3倍もつ倍数体のことを言います。牡蠣類は通常二倍体ですが、受精卵を処理することで人為的に三倍体を作出する事ができ、不稔性を示すため夏でも食べられる牡蠣ができるほか、極めて交雑を起こしにくいことから遺伝的多様性の保全に有効と言われています。
【生息地】
餌となるプランクトンや太陽の恵みが豊富な海面下50cm~6mの浅瀬で養殖。
【旬】
冬~春に、通常の真牡蠣は旬を迎える。11月上旬から出荷が始まり、冬の間“旬”の味わいが楽しめる。産卵期の5月~6月に向けてたっぷり栄養を蓄えている3月が特においしさのピークと言われる。産卵に向けて養分を蓄える春から初夏にかけては、冬とは違った味わいが楽しめる。
【食べ方】
カキフライ、お鍋など加熱調理
【生息地】
二倍体と同様の海域で養殖される。
【旬】
三倍体の真牡蠣は品種改良で産卵をしないため、通年出荷可能でほとんどは秋に流通。小ぶりでカップが深いものが多く、凝縮されたうま味が特徴。海外ではよりポピュラーで、養殖の真牡蠣の4割が三倍体である。日本では7県で、この養殖技術が認められている。
【食べ方】
産卵をしないため、夏でも身が瘦せることなくぷりぷりしているので、牡蠣フライ、牡蠣鍋など加熱調理がおすすめ。
※7県・・・水産庁が令和2年11月時点で「三倍体魚等の水産生物の利用要領」に基づき特性評価確認しているのは、広島県のほか徳島、大分、兵庫、宮崎、三重、千葉の計7県です。
【生息地】
海面下5m~10mの岩場で天然のものが多い。外敵から身を守るために殻が大きく頑丈。
【旬】
夏。6月~8月中旬。海の深い岩場で3年~5年ほどかけてじっくり育つ。近年は養殖技術の発達で早春から楽しめるものも出てきた。
【食べ方】
お刺身
牡蠣にあたったから、もう牡蠣を食べれない(こわくて)・・・という話はよく聞きます。
話を聞くだけで恐ろしくて、私もいつの頃からか生牡蠣を食べなくなりました。
好きか嫌いかと聞かれたら「好き」なんですが、食中毒になってまで食べたいわけではないようです。
牡蠣にはどんなリスクがあるのでしょうか?
牡蠣と言えば!と容易に想像できる食中毒がノロウィルスです。
ノロウィルスの概要は以前もお話したことがありますが、以下の通りです。
●原因食品:生牡蠣、ホタテ、アサリなどの二枚貝(十分加熱していないもの)
●特徴:人のみが感染するウィルス性食中毒。冬場(12月~1月)に多発する。
●症状:腹痛、下痢、微熱、嘔吐など。
●予防方法:
①二枚貝は中心部まで十分に加熱すること。(85~90℃以上で90秒以上の加熱)
②下痢症状のある人は調理の取り扱いをしない。
③手指、調理器具は十分に洗浄・消毒すること。
ただし、加熱処理(85~90℃以上で90秒以上の加熱)で死滅しますので、カキフライや牡蠣鍋がノロウィルス食中毒の直接要因となることはまず考えられません。お刺身として牡蠣を食べる際にノロウィルスのリスクが高まります。
ノロウィルスが恐ろしいのは、感染力が非常に強いことです。ウィルス10~100個程度が身体に入っただけで感染します。また、食べ物だけでなく、ノロウィルス感染者から排泄された吐物や糞便からも感染が広がってしまいます。
そのため、無症状であるノロウィルス感染者が素手で調理をしたような場合に、調理者から食材(加熱処理しない)を介して、ウィルスが拡散されてしまうのです。
牡蠣でのリスクとして、もう一つは腸炎ビブリオが挙げられます。
腸炎ビブリオの概要は以下の通りです。
●原因食品:生鮮魚介類など。
●特徴:真水や熱に弱い。
●症状:激しい上腹部の痛み、下痢、発熱、嘔吐、悪寒など。
●予防方法:
①食材をよく水で洗う。
②十分に加熱調理する。
③調理器具や布巾を熱湯消毒する。
腸炎ビブリオは真水に弱いため、流動水でよく洗浄し、加熱調理をすれば、予防ができる菌です。
また、腸炎ビブリオは4℃以下ではほとんど繁殖しないため、保存方法に気をつければ繁殖を抑えることも可能です。
ノロウィルスも腸炎ビブリオも衛生的に管理され、十分に加熱調理された牡蠣であれば、特に心配する必要はないでしょう。
加熱調理した牡蠣ならば、安心して食べることができることが分かりました。
問題は生牡蠣を食べる時です。
生牡蠣を安全に食べる方法はあるのでしょうか?
答えは、「絶対に食中毒にならない牡蠣」というものはこの世に存在しません。
スーパーで、「生食用」という表示がされている牡蠣を見かけます。生食用と書いてあるんだから、もちろん大丈夫なんでしょ?と思ってしまいますよね。
生食用という表示されているものは、食品衛生法で、生食用牡蠣の規格基準をクリアしているものです。
生食用牡蠣の規格基準には、牡蠣中の細菌の数やその牡蠣が育った環境の細菌数、洗浄後の浄化処理や保存方法などが定められています。
細菌数の基準をクリアした牡蠣なんだから、生で食べても大丈夫なのでは?と思ってしまいますが、これはあくまで細菌数です。
ここで豆知識!
同じように捉えられがちですが、細菌とウィルスはどんな違いがあるのでしょう?
細菌は細胞を持ち、自己複製能力を持った微生物です。
一方、ウイルスは、蛋白質の外殻、内部に遺伝子(DNA、RNA)を持っただけの単純な構造の微生物です。
細菌のように栄養を摂取してエネルギーを生産するような生命活動は行いません。
細菌もウィルスも微生物という名のとおり非常に小さいものです。
細菌はヒトの細胞の10分の1程度の大きさなので光学顕微鏡で見られるのに対し、ウイルスは細菌よりもさらに小さく、ヒトの細胞の100~1000分の1程度の大きさですので電子顕微鏡でないと見ることは出来ません。
よって、ノロウィルスはウィルスですから、生食用牡蠣の規格基準では対象外になってしまうのです。
また、産地で清浄に育てられ出荷された牡蠣であっても、流通過程や、小売店、飲食店、家庭など、生産者の手を離れた後に細菌数やウィルスが混入することも十分に考えられます。
というわけで、繰り返しになりますが、「絶対に食中毒にならない牡蠣」というものはこの世に存在しません。
しかし、絶対に食中毒になるとも限らないのです。
①規格基準をクリアした牡蠣を選ぶこと
②産地の自治体が公開している情報をチェックすること
③飲食店で食べる場合は、飲食店の衛生状態をチェックすること
④家庭で食べる場合は、新鮮な牡蠣を購入し、保存中は常に4℃以下の低温状態に保ち、牡蠣を水道水でよく洗浄し、調理器具や手を清潔にし、できる限り速やかに食べること
とても注意深く食べる必要があります。
また、腸炎ビブリオやノロウィルスが口から入っても、免疫力が高い・体調がいい人は食中毒の症状が出ず、慢性的に免疫力が低い・体調が悪い人は繰り返し症状が出ることがあります。
生牡蠣を食べるときは自身の体調を万全にするよう気をつけることも、あたる確率を下げられる方法の一つと言えるでしょう。
牡蠣は別名「海のミルク」と呼ばれ、さまざまな栄養素をバランス良く含むことで知られています。牡蠣に含まれている代表的な栄養素は、以下の通りです。
・グリコーゲン:摂取後すぐに体内で利用される効率のいいエネルギー
・タウリン:肝臓の働きを活発にする、コレステロールの吸収を抑える、血圧を正常に保つなど、健康維持に重要な役割を果たす栄養素
・鉄分:赤血球をつくって全身に酸素を運ぶなどが代表的な栄養素
ほかにも、髪や肌にうるおいを与えてくれる亜鉛や、アンチエイジングに欠かせないセレンなどの栄養素も多く含まれていると聞けば、ますます牡蠣を食べたくなってきましたね。
個人的には、やっぱり十分に加熱した牡蠣料理(特にカキフライが好きです)をこれからも食べていきたいと思います。
皆様も自分に合わせた牡蠣料理を楽しんでいただければと思います。
find a way 法律事務所
食生活アドバイザー 石田香玲