アフターコロナ 飲食店の人手不足の今
皆様こんにちは。HACCPコーディネーターの石田です。
「コロナもだいぶ落ち着いて、お客さんが戻ってきてくれているんだけど、人(従業員)がいなくて・・・」
飲食店を経営されているクライアントから、このようなお話を聞くことがあります。
確かに、飲食店に行くと満員だったり、コロナ前に戻ったみたいだなぁと感じることも多いですよね。
飲食店の人手不足・・一体どのように対処すべきなのでしょうか?
今回のコラムでは、「飲食店が人手不足に陥る理由と解消法」について解説いたします。
目次
2022年10月の帝国データバンクの「人手不足に対する企業の動向調査」では、51.1%の企業で正社員が人手不足となっており、コロナ禍以降では最高値を更新しています。
業種別では、
・情報サービス(69.1%)
・旅館・ホテル(65.4%)
・飲食店(64.9%)
が上位3業種となっています。
さらに、飲食店に関しては、前年同月比で+23.2%と上昇幅も大きくなっています。
また、非正社員の人手不足割合を業種別にみると、「飲食店」が76.3%と最も高い数字となっています。
僅差で「旅館・ホテル」が75%となっています。
コロナ以前から飲食店の人手不足というのは常態化しています。
実際に当時飲食店で勤務していた私自身も人手不足をまさに痛感していました。
そんな中、コロナが広まって、飲食店の利用規制や営業時間の短縮、酒類の提供禁止などがありました。飲食店は思うように営業ができず、売り上げを大きく落とすことになります。
この時期、多くの飲食関係者が業界を去ったと言われています。
少しずつ制限が緩和され、アフターコロナを目指す中、飲食店はまた人材を確保する必要が出てきています。
しかし、飲食店では、人材確保の採用活動が難しいのが現在の状況です。
せっかくお客さんが戻ってきてくれたのに、従業員がいないために入店制限をせざるを得ない企業も出てきています。
では、なぜ今飲食店では、人材確保が難しいのでしょうか?
飲食店は慢性的に人手不足であると言われています。
なぜか?
答えは従業員の入れ替わりが激しいこと=従業員の「定着率の低さ」が一番の要因です。
では、なぜ従業員が飲食店に定着しないのでしょうか?
飲食店は、24時間営業や深夜まで及ぶ営業時間など長時間労働に陥りがちです。
また、世間がお休みの時(週末やGW、年末年始など)は飲食店のかきいれどきであることから、繁忙期は特に休みが取りづらい業界です。
さらに、シフト制である場合が多く、長期休暇などのまとまった休みが取りづらいことが定着率の低さに影響しているようです。
飲食店は人手がたくさん必要なことから、正社員はほんの一部で、ほとんどの従業員がパートやアルバイトスタッフです。
もちろん、役割に違いを持たせている企業もあるのでしょうが、少ない人数体制の中、非正規社員が、正社員と同じ役割を求められることも多いのが現実です。
非正規社員なのに、クレーム対応をしたり、レジ締めやシフト作成、売上計画を作成している場合などもあるのではないでしょうか。
正社員のような給料をもらっているわけではないのに、同じような役割を求められたら誰だっていやになってしまいます・・。
新型コロナウィルスが拡大したことで、飲食店は「緊急事態宣言」「まん延防止の重点措置」などの影響を大きく受けました。
コロナが落ち着き、飲食店がいざ従業員の採用活動をはじめても、以下の理由から応募が集まりにくいというのが現状です。
・感染リスクを心配し、飲食店のバイトを敬遠される
・飲食業界のコロナの打撃を見て、業界の行先に不安を感じる
飲食店の営業時間は長く、また深夜に及ぶ場合も多くあります。
自分自身も経験してきましたが、店内が広いと1日に何万歩も歩く必要もあります。
料理が盛られたお皿は重く、お客様に提供する際には腰を曲げる回数も半端ありません。
厨房だと1日何十回と手洗いをすることから、手荒れが全く改善せず、つらかった記憶があります。
かわいらしいカフェでおしゃれそう・・とうっかりアルバイトに入ったものの、思った以上の重労働に辞めてしまう人が多いことも現実です。
人手不足を解消するために内的(今在籍する従業員への)対策は以前のコラムでお話したので、今回は採用方法やハード面の人手不足解消法を考えていきます。
お店のカラーやブランドイメージなどで、人材の幅を狭めていることがあります。
今まで採用をしなかったような人材に目を向けてはどうでしょうか。
・主婦
・外国人労働者
・シニア世代
主婦は勤務時間が限られたり、土日に勤務が難しいこともありますが、飲食店特有のピークタイムとアイドルタイムにうまく当てはまれば、とても貴重な存在と言えます。
またシニア世代は体力面が心配ではありますが、今までの豊富な社会経験を活かしてもらえるような業務をお願いしても良いかもしれません。
こんな人材はどうだろう?と採用する人材の幅を広げていく柔軟性はとても大切です。
私は2年ほど前まで飲食業界にいました。その時もすでに人手不足だったので、派遣サービスを導入していました。派遣会社に登録し、条件に見合った人材を派遣会社に紹介してもらうのです。
大体、1ヶ月程度のスパンで人が入れ替わっていきます。
常時、人手不足の場合は派遣もとても有効だと思いますが、飲食店には特有のピークタイムとアイドルタイムがあります。
派遣の場合は長時間勤務の契約が多いことから、この閑散した時間も(必要ない)時間も働いてもらわないといけないことがネックでした。
最近では「タイミー」などの「スキマバイト募集サービス」が台頭しています。
・当日の求人掲載でも人手を確保できる
・1時間の業務から求人掲載可能
・管理画面から簡単な情報を入力すれば求人掲載が開始される
・掲載費用0円
など、この1時間だけ人手があれば・・・や従業員が急に休みになってしまった!などの場合にもこのマッチングシステムはとても有効だと言えます。
人手があれば売り上げれたのに・・もう一人いればお客様をお待たせしなかったのに・・ということがあるなら、マッチングを利用するのもアリではないでしょうか。
最近、ちらほら見かけることが多くなってきた、SNSを利用した募集もおすすめです。
この方法の一番のメリットはお金がかからないことです!
また、お店をフォローしてくれているフォロワーはお店に興味のある人たちですから、お店の雰囲気や商品を既に知っていることから、採用につながりやすいと言えます。実際にInstagramの「♯アルバイト募集」というハッシュタグには48万件の投稿があります。
10代、20代の若い世代の採用方法としてとても有効な方法だと言えます。
全てのお店で可能ではないですが、従業員の負担を減らすためにIT機器の導入を進める動きも出てきています。
WEBでの予約システムはもう当たり前になってきていますし、注文や会計をタブレットでできるお店も増えてきています。
最近ガストに行ったら、ネコ型ロボットが配膳しているのを見て、ここまできたんだと驚きました。
大手企業にしかかなわないこともありますが、電子決済の導入など可能な範囲で効率化を図ることも人手不足解消方法のひとつです。
飲食店の人手不足は永遠の課題です。
自店の人手不足の要因が定着率の低さであるなら、従業員がどんな理由で退職をしようと思うのか丁寧にヒアリングをすることが大切です。
ヒアリングをした上で、自店で工夫をして解決できることなのかを精査しましょう。
募集をしても中々応募が来ない、また理想の人材ではない・・などの場合は今までの採用基準の幅を広げる、採用方法を変えてみるなどご検討ください。
人手が揃っているからこそ、安心安全な衛生管理の実現が可能となります。
このコラムがお客様への安心安全な飲食環境のためにも必要な人手確保の参考となれば幸いです。
find a way 法律事務所
HACCPコーディネーター 石田 香玲