【飲食店向け】無断・直前キャンセルを防ぐには - 大阪市で労使、飲食、M&Aに関する相談は「findaway法律事務所」へ

 

【飲食店向け】無断・直前キャンセルを防ぐには


 

弁護士・中小企業診断士の荒武です。

 

飲食店関係者の方であれば、誰でも一度は予約客の無断キャンセルや直前キャンセルに泣かされたことがあるのではないのでしょうか。

 

経産省の委託調査によると、飲食店における無断キャンセルは、全予約数の約1%を占めており、飲食業界に年間約2000億円の損害を与えているそうです。

 

更に、2日前までの直前キャンセルも含めると、年間被害総額は約1兆6000億円にも上ります。

 

飲食事業全体の市場規模が約26兆円ですから、キャンセル被害の影響は許容できるラインを超えています。

 

また、せっかく作った料理やスタッフの労力が無駄になってしまうこと自体がとても残念なことです。

 

そこで、少しでもキャンセル被害を減らすために、キャンセル対策として採り得る手段をご紹介いたします。

 

キャンセル対策としては、弊所記事の【飲食店における無断キャンセル対策】がありますが、今回はキャンセル料以外の対策や注意事項も列挙させていただきます。

 

 

 

1 そもそも何故キャンセルが多いのか?

 

TableCheck社による消費者意識調査によれば、場所確保のためにとりあえず予約しただけだからというキャンセル理由が最も多いです。

 

また、無断キャンセルが最も多く発生する予約手段は、グルメサイト予約が最多です

 

つまり、オンラインツールの発達により、「とりあえず席だけ確保しておいて、いい店が見つかればそっちに行く」という意識が消費者に根付いているのです。

 

他方、7割の消費者がキャンセル料の支払いを妥当と考えており、キャンセル料に対する理解は進んでいます。

 

すなわち、以下のとおり分析できます。

 

 キャンセル対策を講じなければキャンセル被害が増え続ける

② キャンセル対策を講じても消費者からの反発は少ない

 

顧客への遠慮等から積極的な対策を講じない飲食店もあるとは思いますが、データを参照する限りでは対策をするメリットの方が多いです。

 

では、具体的にどのようなキャンセル対策があるか解説していきます。

 

 

 

 

2 キャンセル対策の具体例

 

(1) キャンセル料を設定する

 

キャンセル対策の基本です。

 

キャンセルに対する抑止力になりますし、万が一キャンセルをされてしまっても、損害を抑えることができます。

 

ただし、実際にどうやってキャンセル料を回収するかという問題があります。

 

また、具体的にいくらぐらいのキャンセル料を設定すればよいのかが悩ましいです。

 

 

 

 

(2) キャンセルポリシーを作成する

 

予約時に顧客の同意がなければそもそもキャンセル料の支払いを求めることはできませんので、キャンセルポリシーの作成は必須です。

 

キャンセルポリシーには、キャンセル料の設定以外に、以下のような記載をしておくことも有益です。

 

・連絡がつかなくなった場合や30分以上無断で遅刻した場合はキャンセル扱いとする等、対応に困る状況を想定した条項

・マスク着用、手指の消毒、体温測定等を拒否した場合に入店を制限する等、新型コロナ対策に関する注意事項

 

マスク着用に関しては特にトラブルになりやすいので、丁寧に明記しておきましょう。

 

ただし、丁寧過ぎて長文になってしまうと、そもそも読まれない可能性があります。

最も重要なキャンセル料の記載を最上段に位置付け、その他の条項も簡潔明瞭な記載を意識してください。

 

大きなフォントで、予約ボタンの真上等の見やすい位置に記載しておくことも重要です。

 

 

 

 

(3) リマインドをする

 

予約日の直前にリマインド(予約状況の確認連絡)をしておくことは重要です。

予約したことを忘れていたり、勘違いしていたことによる無断キャンセルも防止することができます。

体調に不安がある顧客に対して早めのキャンセルを促すという効果も期待できます。

 

連絡の手段は電話よりメールの方がよいです。

電話を嫌がる顧客は少なくありませんし、電話を受けられない状況であったり、そもそも知らない番号は無視するという人も増えています。

メールであれば、確実にメッセージを届けられる上、顧客から嫌がられることも少ないです。

 

また、日時、人数、プラン等の予約状況の確認以外にも、店舗の位置情報や、キャンセルポリシー等の情報も載せられます。

 

リマインドをする目安としては、来店3日前に一度だけメールするぐらいがちょうどよいでしょう。

1週間前だと忘れられる可能性がありますし、前日だとキャンセル対応が間に合わないおそれがあります。

 

また、通常のメールだと他の用件に埋もれて読まれないおそれがあるので、SMSで送信するのがベターです。

 

 

 

 

(4) 補償サービスに加入する

 

最近、大手ネット予約サイト等が無断キャンセル保険サービスを開始しています。

 

補償の内容や条件は様々ですが、損害を確実に減らせる点は魅力的です。

また、損害を填補できることが余裕を生み、キャンセル対応で反感を買うリスクを減らせるというメリットもあります。

ただし、月額数万円程度の保険料がかかるので、月々のキャンセル損害額と比較・吟味の上での加入をおすすめします。

 

 

 

 

(5) 事前決済を導入する

 

あらかじめ代金をクレジットカード等で決済しておいて、キャンセルの場合はキャンセル料を差し引いて返金する方法です。

 

キャンセル料を確実に回収できる上、キャンセル自体に対する強力な抑止力になります。

また、店員との接触を避けられること、食後にスムーズに退店できることから、顧客にとっても利便性が高いです。

 

月額費用も数千円程度のものが多く、決済手数料も3~6%程度なので、店舗側の負担は通常のカード決済と大差ありません。

 

コロナ禍において、人との接触を避けられるシステムは、エアレジ同様に今後の普及が見込まれますので、選択肢の一つに入れておいてよいかも知れません。

 

 

 

 

(6) ネット予約を廃止する

 

キャンセルにつながる予約の多くが「とりあえず場所確保」のためにされていることからすると、手軽に予約できる手段を廃止するというやり方も考えられます。

 

しかし、予約のハードルが上がるため、若い世代をメイン顧客とする店舗には適していません。

 

また、ネットを利用した便利な予約管理システムは今後も発達していくことが見込まれます。

 

既にネット予約に対応しているのであれば、今更それを廃止することには慎重になった方がよさそうです。

 

 

 

 

3 まとめ

 

キャンセル対策において重要なのは、根拠を示して丁寧な態度で接することです。

 

キャンセルした側に非があるにもかかわらず、店側が過度に顧客を非難したり晒したりしたために、逆にSNS等で炎上する事例が増えています。

また、店主の好き嫌いとしかいえないような細か過ぎる注文を予約ページに記載してネットで晒されるという事案もあります。

 

適切で必要十分なキャンセル料の設定、キャンセルポリシーの作成をするには、専門の弁護士に依頼するのが最良です。

 

弊所では予約の無断キャンセルや直前キャンセルについて、以下のようなサポートを行っております。

 

・キャンセルポリシーの作成

・キャンセルポリシーの顧客に対する明示方法の助言

・キャンセル料請求に向けた顧客の住所調査

・内容証明郵便による催告書の送付

・裁判手続(支払督促、訴訟)

 

弊所は大阪でも数少ない飲食店法務に高い専門性を有する法律事務所です。

必ずお力になりますので、お気軽にご相談・お問合わせください。

 

 

 

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弁護士・中小企業診断士 荒武 宏明