【実績】粘り強い賃金返還請求
弁護士・中小企業診断士の荒武です。
当事務所は、労使関係法務(企業側)や飲食業関連法務に注力しています。
当事務所のクライアントは中小企業が中心ですので、シンプルな貸金返還請求のご依頼を受けることもあります。
シンプルな貸金返還請求とは、会社がお金を貸したのに相手方がお金を返してくれないというケースです。
金銭消費貸借契約書を交わしておけば、基本的に裁判には勝てるでしょう。
しかし、裁判に勝てる=お金を回収できる、ではありません。
裁判に勝っても、実際に回収するためには長く険しい道のりがあるのです。
この記事では、当事務所が貸金返還請求の依頼を受け、粘り強く債権回収に挑戦した実績を紹介します
(まだ回収の途中ですが)。
目次
X社から、
知人が経営するY社にお金を貸したが、のらりくらりと言い訳しながら、いつまでたっても返してもらえない
とのご相談がありました。
お話を伺ったところ、金銭消費貸借契約書を交わしており、支払期限を経過していました。
貸付金額は、約2300万円でした。
お金を返さない理由は、X社との関係悪化とY社の資力不足でした。
金銭請求では、お金が無いこと(手元不如意の抗弁)が最強の武器と言われます。
それでも、2300万円という金額は諦めるには高額過ぎるので、とにかく交渉を進めることにしました。
債権回収は内容証明郵便を送ることから始まることが多いです。
内容証明郵便とは、文書内容と配達したことを郵便局が証明してくれるサービスです。
何か強制力があると誤解されていることがありますが、単なる郵便局のサービスの1つです。
ただし、弁護士が重々しい文章で作成した内容証明郵便の通知書は、何かしらの強制力でもありそうな迫力があります。
当事務所からY社に内容証明郵便を発送したところ、Y社の代表者から「事務所に伺うので、話を聞いてほしい」と電話がありました。
素直に支払いに応じるのがベストではありますが、無視されるよりはましです。
Y社長の話を伺うことにしました。
Y社長の言い分は、「確かにX社からお金を借りたが、X社から色々と迷惑をかけられた」というあいまいなものでした。
弁護士から「契約書もあるので、返済を免れることはできない」と説得したところ、「少し考えさせてほしい」とのことで、Y社長は帰っていきました。
しかし、その後もY社長からの連絡はないまま、2週間が経過しました。
このままでは埒が明かないということで、仮差押えを申し立てることにしました。
仮差押えとは、文字通り、財産を仮に差し押さえることです。
訴訟を起こして判決をとっても、お金を隠されてしまえば回収できません。
そのような場合に備え、裁判所に事情を説明して、相手方の財産を仮に差し押さえてしまうのです。
今回は、X社がお金を貸した時に振り込んだY社のメインバンクの口座を仮差押えしました。
仮差押えしたところ、銀行には約250万円の残高がありました。
しかし、銀行がY社に貸し付けをしていたため、銀行は、仮に判決が出てもX社には支払えないと言ってきました。
銀行口座を差し押さえても、銀行が貸付けをしている場合、貸付金と口座にあるお金を相殺するのです。
仮差押えの後、しばらくするとY社の弁護士から電話がありました。
銀行から「仮差押えを受けたなら、貸付金を一括で弁済しろ」と迫られており、困っているとのことでした。
Y社の弁護士は、「何とか仮差押えを取り下げてもらいたい」と言ってきました。
そのまま取り下げるくらいなら最初から仮差押えなんてしません。
こちらから、「銀行の残高250万円をそっくりそのままこちらに渡すなら、仮差押えを取り下げる」と提案しました。
ということで、まずは250万円を回収しました。
仮差押えを取り下げた後も何の連絡もなかったので、訴訟を起こすことにしました。
仮差押えの結果から、Y社にはお金が無いことが予想されました。
しかし、契約書が存在するため、Y社からの効果的な反論はないと判断し、訴訟を起こしました。
訴訟を起こしたところ、Y社の弁護士は一応の反論をしてきました。
しかし、裁判官はY社の反論を取り合わず、すぐにX社の請求をすべて認める判決が下されました。
Y社は控訴(高等裁判所で争うこと)することなく、判決が確定しました。
判決が確定したので、次は回収方法を考えないといけません。
仮差押えをしたため、Y社のメインバンクには残高がありません。
しかし、事業を行うためには銀行口座が必要ですので、Y社は別の銀行にも口座を作っているはずです。
Y社は地方の会社です。
そのため、本社近くの地方銀行の支店に狙いを定めて差押えを実行しました。
すると、地方銀行に120万円の預金が見つかり、これを回収することができました。
その後、Y社の弁護士に連絡し、どのように支払っていくつもりか確認しました。
Y社の弁護士の回答は以下のとおりでした。
・判決が確定した以上は支払うつもりはある
・お金がなくて支払いたくても支払えない
・現在、取り組んでいる新規事業が軌道に乗れば、まとまったお金が入る
・新規事業の進捗は報告するので時間をいただきたい
訴訟が終われば後は知りませんという弁護士もいる中で、引き続き窓口になってくれるY社の弁護士は誠実でした。
そのため、しばらく様子をみることにしました。
Y社の弁護士は、不定期で、新規事業の進捗をFAXしてきました。
しかし、もうすぐでお金が入るという状況を繰り返すまま具体的な進展は見られず、1年が経ちました。
そのため、仮差押えをしたメインバンクに対し、今度は差押えを実行することにしました。
今回は、判決が確定しているので、仮差押えではなく差押えです。
差押えをしたところ、約260万円の残高がありました。
しかし、仮差押えの時と同様、銀行から貸付けをしているため、X社には支払えないとのことでした。
すると、すぐにY社の弁護士から電話がありました。
聞くところによると、メインバンクがY社に対し、一定の期限を設定し、「期限までに差押えが解除されなければ、取引を停止する」と言っているとのことでした。
そうなると、Y社は倒産します。
Y社の弁護士は焦っており、何とか取り下げてもらえないかとのことでした。
Y社の弁護士と協議した結果、残高の1/2である130万円を支払えば、差押えを取り下げるということになりました。
しかし、こちらが差押えを取り下げなければ、Y社は130万円を用意できない状況でした。
そのため、以下の手順を取りました。
① Y社がメインバンクに130万円の送金予約を申し込む(1週間後に送金)
② 送金予約を取り下げない旨の合意書を交わす(取り下げた場合のペナルティも明記)
③ 合意後、X社は差押えを取下げ
以上の経緯で、無事に130万円を回収することができました。
Y社との交渉開始からもうすぐで3年になります。
まだ、2300万円のうち、500万円しか回収できていません。
Y者側もこちらの回収に注意を払っている状況です。
しかし、判決の効力は10年ありますので、X社と相談しつつ、想像力・創造力を駆使して、残り1800万円を粘り強く回収していこうと思います。
シンプルな貸金返還請求では、裁判に勝つ、判決を獲得することはそれほど難しくありません。
契約、法律に従って自ずと結論は出ます。
難しいのは、どうやって回収するかです。
法律上の手続の理解はもちろん必要ですが、想像力、忍耐力が求められ、弁護士の個性が発揮される場面です。
今回の事件では、
・交渉
・仮差押え
・訴訟
・強制執行×2回
と民事手続をフルコースで行いました。
適切なタイミングで、適切な方法を選択することが重要です。
当事務所では、粘り強く債権回収を行うことを徹底しています。
債権回収に苦労しているという方は、問合せフォームまたは事務所LINEアカウントよりお気軽にお問い合わせください。
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弁護士・中小企業診断士 荒武 宏明