飲食店における危機管理 - 大阪市で労使、飲食、M&Aに関する相談は「findaway法律事務所」へ

 

皆様こんにちは。HACCPコーディネーターの石田です。

 

プロ野球が開幕し、もう1か月が経過しました。阪神タイガースは好調ですね!

新型コロナウィルスの感染拡大が収まらず、悶々とした日が未だ続いていますが、皆様いかがお過ごしでしょうか。

 

我が家は緊急事態宣言により、しばらくは外出自粛をすべく、娘と公園でピクニックをしたり、おうちでアクアビーズを制作したり、いい時間を過ごしています。外食はマスクを着用し除菌を徹底しつつも、家族でできる限り利用しています! だってお外で食べるご飯はやっぱり特別においしいし、幸せなことだと思うからです。

 

本日は飲食店での食品衛生における危機管理についてお話していきます。

 

1 飲食店が行う危機管理とは何?

 

一般に危機管理とは、

● 危機を事前に防止する対策を備えること

● 発生してしまった危機に対し、被害の拡大を抑えるために実施すること

● 危機から脱した後、被害からの早期回復及び発生原因を解明して再発防止を図る

 

危機の発生前~発生~発生後にそれぞれ行うことです。

 

飲食店ではどういった事故やクレーム(危機)があるでしょうか・・・

「食中毒」

「食物アレルギー」

「異物混入」

「店舗火災」

などでしょうか。

ではこういった危機に対し、どのようにして備えていくべきかを考えていきます。

 

 

 

2 危機を事前に防止する対策を備えること

 

危機管理とは「危険を事前に防止する対策を考える」をまず行います。

 

今回は、食中毒を防止するために行う対策を考えます。

食中毒予防の三原則は菌を「付けない」「増やさない」「やっつける」です。

この各項目に対し、それぞれどのようなことが対策できるかというと・・

 

「付けない」

・食品取扱者の健康管理、衛生管理

・肉類や魚介類、野菜等の原材料から他の食品への二次汚染の防止

・施設設備、器具、容器等を清潔に保つ

 

「増やさない」

・冷蔵庫・冷凍庫の温度管理

・原材料は迅速に処理する

・調理済みの食品は速やかに提供し、室温に放置しない

 

「やっつける」

・食品は中心部を75℃で1分以上(ノロウィルス汚染の可能性の場合は85~90℃で90秒間)加熱する

・野菜類は必要に応じて次亜塩素酸ナトリウム等で殺菌する

・アニサキスは中心部-20℃で24時間以上冷凍する(すべての寄生虫が冷凍死滅するわけではない)

 

食中毒予防の3原則の対策をしっかりとれていれば食中毒のリスクがかなり下がります。また、併せて衛生管理の5Sを行っているととさらに効果が高まります。

 

*5Sとは①整理 ②整頓 ③清掃 ④清潔 ⑤習慣の5つで構成され、職場環境の改善だけでなく衛生管理に有効な活動とされています。

 

今回は例で食中毒の事前予防対策を考えましたが、食物アレルギーや異物混入などの予め起こりうる危機を想定し、事前にそうならないための対策をそれぞれ考え実行します。令和3年6月1日から完全施行される「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」はまさにこの危機を事前に防止する対策そのものだといえます!

 

 

 

3 危機発生時の対応

 

食中毒や異物混入などが起きた時、被害が広がらないよう素早く行動を起こせるように、危機発生時の対応方法などを決めた「危機対応マニュアル」を作っておくとよいですね。大層なものでなくてよいので、以下の詳細がわかるよう記録しておくことをお勧めします。

 

・誰に報告するのかなどの連絡ルート

・必ずこれはやる、絶対やってはいけないことを示す

・行動手順を明確に迅速にできるような指示書

・指揮する人(責任者)が不在の場合の代理の責任者は誰か

 

 

そしていざ危機が発生してしまった際の対応についてです。

 

① 何が起きたか、事実を確認する。

(健康被害、アレルギー、異物、表示、接客サービス)

 

② ①の事実が、どこまで影響するかを見極める。

(重大性、緊急性、回収、営業の自粛の必要性、社外への対応、二次被害など)

 

③ 当面の方針を決め実行する。

(人の安全確保・保全、二次災害の防止、従業員・関係者への周知、原因究明、除去、修理、補修)

 

危機発生時の初期対応のスピードで事故の大きさや収拾状況も変わってきます。

いかに正確に、幅広い視野で客観的に事実や情報を収集できるかがとても大切です。

また、方針を決めた後も状況に合わせて対応方法の修正を都度行うことが必要となります。

 

 

 

4 クレーム対応について

 

私は飲食店勤務の際に多くのクレーム対応をしてきました。何度対応しても慣れず、自分

の対応で十分であったか・・と毎回不安に思っていた記憶があります。

飲食店におけるクレーム対応の基本をご紹介致します。

 

(1)お客様対応の基本

 

・まずは何よりもお客様の立場を尊重し、ご迷惑をおかけしたことを心から謝罪する。

・お客様の話を途中でとめず、最後までお伺いする。

・自分の非を認める、たらい回しにしない、了承いただけたら責任者から電話をかけ直すなど柔軟に対応する。

・お客様の主訴をしっかりくみ取れるよう、適宜相槌や共感をお伝えできるようなアクションを取る。

 

お客様のお申し出がすべて事実ではありません。しかしながら、クレームをお申し出下さっている時間もお客様にとって貴重な時間に変わりありません。貴重なご意見を頂いていると認識し、自己防衛に走らず、お客様の立場になり真摯な対応に努めましょう。

 

 

(2)クレームを起こさないために

 

1.衛生管理の徹底

「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」を行い、実施した内容をしっかりと記録する。

・実施した内容の振り返りを行い、改善点を明確にする。

・問題が発生した場合はその対応と改善措置についてミーティングなどで周知する。

 

2.情報の共有

・お客様からクレームを受けた際は、必ず責任者に伝え必要な改善措置を徹底し、全従業員で共有する。

・他社の食中毒や異物混入事故情報を共有し、自店舗の事故発生防止に活用する。

 

 

5 まとめ

 

今回は飲食店が行う危機管理で食中毒に対しての危機管理やクレーム対応などをお話しました。5月に入り、気温もぐんぐん上がりはじめ食中毒のリスクが上がってくる季節です。今一度基本に立ち返り、自店舗の状況や対策の振り返りにご活用いただければと思います。

また、緊急事態宣言により、酒類の提供ができないことから、急遽テイクアウトやデリバリーを始められたお店も多いのではないでしょうか。テイクアウトやデリバリーに関する衛生管理の記事もご参考にして頂ければと思います。

 

テイクアウト・デリバリーにおける衛生管理の手法