ざっくり比較! 借金を減らす4種の方法
弁護士・中小企業診断士の荒武です。
最近、YouTubeの広告等で「国が認めた借金救済制度」という文言をよく見かけます。
グレーゾーン金利が撤廃され、過払いブームも去って久しいですが、未だに借金で苦しむ人は多いようです。
しかし、借金を減らす方法はあります。
今回は、破産、小規模個人再生、給与所得者等個人再生、任意整理の4種類の方法を取り上げ、「債務をいくらまで減らせるか」、「メリット」、「デメリット」をざっくり比較しつつ解説させていただきます。
ご自身の生活状況や債務の額等と照らし合わせて、どれが最適な方法なのかを導き出す一助としていただければ幸いです。
目次
いきなり中身に入ってもイメージが湧かないと思いますので、これらがどういった手段なのかを軽く説明します。
破産は、裁判所に申立てて、債務をゼロにしてもらう手続きです。
小規模個人再生と給与所得者等個人再生は、裁判所に申立てて、債務を減額してもらう手続きです。
この2つはまとめて個人再生と呼称されるもので、実質的にもほぼ同じものです。
任意整理は、債権者と交渉して債務を減額してもらう方法です。通常は弁護士を代理人に立てて行います。
以下では、当事務所で実際にご依頼を受けた生々しい事例もご紹介いたします。
説明の都合上、細かい条件等が多くなりますので、結論が知りたいという方は赤字の部分だけお読みください。
裁判所から免責(債務を免除すること)が認められると、原則として債務は全て清算されます。
要するにチャラです。
ただし、破産開始決定時に持っている財産は、1か月分の食料、仕事道具、義手義足等の生活に必要なものを除いて、破産管財人(破産者の財産を管理する弁護士)によって売却され、債権者への弁済にあてられます。
現金も99万円以下の自由財産(最低限の生活に必要な財産)を除いて債権者への弁済にあてられます。
また、税金や養育費、悪意の不法行為によって負った債務、罰金等の債務(破産法253条1項各号)は例外的に清算されないのでご注意下さい。
裁判所が、最低限返済しないといけない金額のおおよその目安を公表しているので、引用します。
債務などの総額(住宅ローンを除く)に応じて、債務などの総額が
100万円未満の人・・・・・・総額全部
100万円以上500万円以下の人・・・・・・100万円
500万円を超え1500万円以下の人・・・・・・総額の5分の1
1500万円を超え3000万円以下の人・・・・・・300万円
3000万円を超え5000万円以下の人・・・・・・総額の10分の1
↑これらの金額を除いた分が減額される範囲となります。
要するに、100万~500万円の債務が残るものの、最低でも5分の1、最大で10分の1にまで債務を大幅にカットできるのが小規模個人再生です。
減額された債務は3~5年かけて弁済していくことになります。
小規模個人再生を利用した場合の金額と“自分の可処分所得額(自分の収入の合計額から税金や最低生活費などを差し引いた金額)の2年分の金額とを比較して,多い方の金額”が、最低限返済しないといけない金額となります。
つまり、あまり大きな差ではないとはいえ、どうあがいても小規模個人再生より損です。
小規模個人再生を利用できるのであれば、給与所得者等再生をわざわざ利用する理由はありません。
弁護士の交渉次第です。
限りなくゼロまで減らせる場合もあれば、少ししか減額しかできない場合もあるでしょう。
ケースバイケースです。
当事務所で解決した事例の中には、5社に対する合計約1500万円の請負代金を各々9割減額してもらったケースがあります。
こちらからの交換条件等がなく、一方的に債務の減額を要求するしかない事例だったので、クライアントにはまとまらない可能性もあると説明していました。
とはいえ、まずは交渉してみないと始まりません。
ひとまず貸会議室を借りて、債権者である5社に対する説明会を開催しました。
予想通り、債権者は、債務を10分の1にして欲しいというこちらからの要求に対し、激しく反発しました。
2時間以上にわたる交渉の中、怒りをぶつけられたり、用意していた合意書を投げ捨てられる場面もありました。
一部の債権者とは後日あらためてファミレスで面談することになりました。
しかし、破産と比較したメリットを説く、従業員のために会社を再建したいという熱意を伝えるといった、弁護士の粘り強い交渉によって、何とか合意にこぎつけることができました。
このように、到底無理があると思われる減額も、弁護士次第で通る可能性はあります。
個人再生ができない会社経営者の方は、破産をする前に一度検討してみてもよいと思います。
破産のメリットは、確実に債務がゼロになることです。
健康上の理由等で働きながら弁済することが難しい人には特に適した制度といえます。
小規模個人再生も給与所得者等再生も、いずれも大きなデメリットがなく、確実に債務を大きく減額できることがメリットです。
任意整理は即効性と柔軟性があるのがメリットです。
実際に効果を発するまで、破産なら半年~1年、個人再生は約1年の期間を要します。
しかし、任意整理は複雑な手続きがなく、そこまでの時間はかかりません。
また、交換条件の設定や分割払いの仕方も自由に決められるので、債権者と債務者の双方が納得する解決方法を探りやすいです。
①車や持ち家を手放す必要がある
②一定の職業に就けなくなる
③一定の事由がある場合に免責不許可(破産が認められないこと)になる
④信用情報に傷がつく(クレジットカードが作れなくなる)
⑤官報(国が発行する機関誌)に氏名や住所を載せられる
⑥今後7年間は破産できなくなる
といったデメリットがあります。
車や不動産を手放すことは、思い入れや先々への不安といった心情から、受け入れがたいことと思います。
しかし、債務が返せなければ、これらはいずれ債権者に差押えられてしまいます。
また、破産をすると、一定の士業や、金融関係や旅行業者等の仕事に就けなくなりますが、これらの職業に就いている人はそういった職業制限については既にご存じでしょう。
③については、破産法252条1項各号が免責不許可になる場合を定めています。
代表的なものとしては、ギャンブルやFXで債務をした場合や、破産することを知りながらお金を借りた場合や、虚偽の債権者名簿を提出した場合、財産を隠匿した場合等に免責が認められないことがあります。
しかし、常に免責不許可となるわけではなく、もうギャンブルはしないという誓約書や反省文等を裁判所に提出すれば、免責されることがあります。
また、④についても破産してから5~10年程経過すれば再び作れるようになります。
⑤、⑥についてはそもそも大きなデメリットではありません。
そうすると、破産をしたことによって被る大きなデメリットは、実質的には①と②のみと結論付けられます。
少なくとも一般的に抱かれているネガティブなイメージ程ではありません。
・債権者の異議によって認可されなくなる場合がある
・最低でも100万円の債務は残る
といったデメリットがあります。
小規模個人再生を申立てても、債権者の半数以上か、債権額の過半数を占める債権者が異議を出せば、再生が認可されなくなります。
債権者にとっては、破産されるよりは細々と弁済してもらった方が得ですから、異議は出にくいようにも思われます。
しかし、大手クレジットカード会社の中には、高確率で異議を出してくる会社もあるので、クレジットカードを多用されている方はご注意下さい。
・給与所得者で収入が安定している人しか利用できない
・最低でも100万円の債務は残る
といったデメリットがあります。
一般的に、給与所得者等再生は、給与所得者しか利用できません。
また、給与所得者であっても、年収ベースで収入が20%以上変動する人は利用できないとされています。
ほとんどサラリーマンや公務員のみを対象とした制度です。
しかし、使える人が限定されていることと、債務がゼロにはならないこと以外に特段のデメリットはありません。
・いくら減額できるかが弁護士次第であること
任意整理でいくら減額できるかは交渉次第であり、結果が予測しにくい点がデメリットです。
また、債務整理はどこの弁護士事務所でも取り扱っている案件であり、検索でも大量に引っかかるので、どこに依頼すればよいのかがわかりにくいです。
安易に目についた事務所に依頼するより、口コミやHPの実績欄等を参考にしつつ、慎重に情報収集してから決断することをおすすめします。
以上の比較をまとめると
・債務が莫大で減額しても支払えない方、少額であっても支払うことができない方、持ち家や車等の資産がない方には破産
・ある程度資産を持っている方、返せる範囲で債務を返していきたいという方には個人再生
・資産があり、収入が安定しない個人事業主の方には任意整理
がおすすめとなります。
しかし、これはあくまで目安です。実際には借金の原因や生活環境等様々な要因によって最適な方法は分かれます。
まずはお一人で抱え込まず、お近くの弁護士にご相談されることをおすすめいたします。
当事務所では法人、個人事業主の方の債務整理や破産についてのご相談をお受けしています。
債務超過に陥ったもののまだ事業を継続したいという方、従業員のために会社を破産させるわけにはいかないという方は、是非ご連絡ください。
最後の最後まで決して諦めずに、事業を立て直すための道を、ともに模索させていただきます。
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弁護士・中小企業診断士 荒武 宏明