家庭でできるHACCP
皆様こんにちは。
HACCPコーディネーターの石田です。
今回は、家庭でできるHACCPについてお話します。
目次
HACCPとは、食中毒を発生させないための食品の安全な管理方法のことです。
令和3年6月1日より、全ての飲食事業者に対しHACCPの導入が完全義務化となりました。
食中毒の発生場所で一番多い場所は飲食店です。全体の54.5%を占めています。
第2位は家庭で、24.1%を占めているのです。
これは、給食施設や旅館などを大きく上回る数字です。
そのため、飲食店ではもちろん導入すべきなのですが、家庭でもHACCPを導入することが必要です。
飲食店では色々と記録したり、管理する必要があるんですが、家庭ではその必要はありません。
食中毒予防の見地からHACCPを取り入れることのできるポイントをご参考いただければ幸いです。
食品の中に食中毒菌がいても、食中毒を起こす量まで増えなければ、食中毒は発生しません。
では、どうやって食中毒菌をコントロールするのか・・
食中毒を予防するためには、「菌をつけない・増やさない・やっつける」という3原則を基本とします。
生活の中で、この「菌をつけない・増やさない・やっつける」を意識して行うこと=HACCPを取りいれるということ
なのです。
食品購入時、持ち帰り時には、「菌をつけない(自宅に持ち込まない)」を意識しましょう。
具体的な方法は以下の4つです。
①生鮮食品(肉・魚・野菜)は新鮮なものを購入しましょう。
(SDGsや食品ロスの取り組みから、)賞味期限の一番長いものを選びましょうという訳では決してありません。
②冷蔵や冷凍などの温度管理が必要な食品は、買い回りの最後に買うようにしましょう。
(また、買い物後は、寄り道をせず、早く帰るようにしましょう)
③肉や魚の汁(ドリップ)が出ているものは、持ち帰る際、ドリップが他の食材に付着しないよう、ビニール袋に入れましょう。
④生鮮食品は保菌数が多いため、バックに入れる際は、汚染度の高い生鮮食品を下にし、汚染度の低い食品を上に収納することをおすすめします。(硬さ、形状などあるので、現実的には難しいかもしれませんが)
自宅にて商品を保存する際は「菌を増やさない」(=温度管理)を意識しましょう。
具体的には以下の通りです。
①冷蔵や冷凍食品など温度管理が必要な食品は、帰宅後速やかに冷蔵室、冷凍室に収納しましょう。
②冷蔵室への食品の詰め込みすぎに注意しましょう。冷蔵室へは容量70%程度を目安に収納しましょう。
③肉や魚など、ドリップの恐れがある食材は、ビニール袋やタッパーなどに収納し、他食材と交差汚染しないよう管理
しましょう。また、取り扱い後は、衛生的手洗いを行いましょう。
④毎日でなくとも構いませんが、冷蔵室、冷凍室の温度は適正か温度計を確認しましょう。
冷蔵室の適正な温度は、10℃以下、冷凍室は―15℃以下です。
⑤冷蔵室へ生鮮野菜を収納する際は、段ボールは保菌率が高いので、外しましょう。
泥などがついた野菜は、流水で洗浄してから、もしくは他食材に付着しないよう梱包して収納するようにしましょう。
調理の下準備時は「菌をやっつける」(=手指・使用する調理器具等の消毒・殺菌)を意識するようにしましょう。
①手をしっかり洗いましょう。洗浄後は、しっかり水分を拭き取り、アルコール消毒をすることをおすすめします。
ペットを触った時、トイレに行った時、おむつを取替えた時、鼻をかんだ後、卵や肉、魚を触った際もしっかり手指を
洗いましょう。
②生の肉や魚を切った包丁やまな板はしっかりと都度洗浄し、熱湯消毒やアルコール消毒を行いましょう。
包丁やまな板を介しての2次汚染が多く見られます。できるだけ、食材ごとに洗浄をすることをおすすめします。
まな板は、肉・魚用、野菜用と2種類用意するとさらに安心です。
③冷凍食品の解凍は、冷蔵庫の中や電子レンジで行いましょう。
流水で解凍する場合は、気密性のある容器や袋に入れて行いましょう。爲水(水の流動がない)は食中毒菌が増殖する可能性が
あります。必ず、流水を使用しましょう。
④包丁やまな板、食器などは、洗った後、熱湯をかけると、消毒効果が高まります。
また、布巾の汚れは漂白剤に漬け込みましょう。洗浄効果とともに消毒効果も上がります。
アルコール消毒を噴霧する際は、殺菌効果が薄れないように水分をしっかりふき取ってから行いましょう。
*漂白剤は使用方法をしっかり守り、塩素系と酸素系を混ぜたり、熱湯を使わないようにしましょう。
⑤基本的なことですが、調理を行う際には、調理する作業台、まな板、包丁は清潔なものを使用し、アルコール消毒を噴霧
してから調理を行うことをおすすめします。
調理時も、「菌をやっつける」を意識するようにしましょう。
①細菌を殺すためには、加熱が一番効果的です。目安として、食品の中心温度が最低75℃の状態で1分以上加熱しましょう。
②調理を途中でやめる場合(家庭ではよくありますよね)、そのまま放置せず、都度冷蔵庫に収納しましょう。
当たり前のことですが、食事をする前に手洗いを行いましょう。
生鮮の魚介類は、夏場、時間をかけて食べず、速やかに食しましょう。
食品によっては10分放置するだけで細菌が2倍に増殖することもあります。
片付け時には、調理器具やタオル布巾、スポンジ等に、「菌をつけない」を意識しましょう。
①タオル、布巾の取り扱い
清潔で乾燥したものを使用しましょう。使用後、都度洗濯するか、熱湯消毒、漂白剤などを使用して消毒することが理想です。
水分は細菌の増殖要件の1つです(細菌は、水分・栄養・温度の条件が揃えば、増殖していきます)。
洗濯まではできない・・という場合には、水分をしっかり乾燥させることのできるよう、風通しの良いところで保管しましょう。
②スポンジ、たわしの取り扱い
食器や調理器具を洗う際に使ったものは、すぐ洗剤と流水でよく洗って乾かしましょう。
夏場や梅雨時など、3日に1度程度、スポンジ、たわしを漂白剤に漬け込み、殺菌をするとよいでしょう。もったいないからとスポンジがボロボロになるまで使用してしまいがちですが、料理などに混入する可能性もあるため、定期的に新しいものに取り換えましょう。
③流し台
調理をする場所だけでなく、流しや三角コーナーも毎日きれいに洗浄しましょう。
調理後、布巾などで拭きあげを行った後、アルコール製剤を噴霧することも効果的です。
④食洗器
食洗器の中は高温・水分・(残飯などの)栄養の細菌が増殖する条件が揃っています。
定期的に清掃を行うようにしましょう。
食器カゴなども同様です。
保存時は、「菌を増やさない」(=温度管理)ことが大切です。
残った料理を保存しておく場合は、清潔な食器を使い、温かい料理であれば早く冷えるように、浅い皿や容器に小分けにして収納するようにしましょう。
また、再加熱して食べる際は中心部までしっかりと加熱しましょう。
有名な話ではありますが、カレーなど大量調理をする料理はウェルシュ菌という菌の繁殖による食中毒がよく発生します。小分けにして加熱するか、お鍋のまま再加熱する際は中心部までしっかりと温まるよう、よくかき混ぜながら温めるようにしましょう。
HACCPというと、なんだかむずかしそう・・と飲食店の皆様にも中々導入が進まない現実があります。
しかし、HACCP=食中毒を起こさないためにどうするか、ということです。
言うまでもないですが、食事というのは人が生きていく上で必要不可欠な行為です。
そして、美味しいものを食べると、身体だけでなく心まで満たされますよね。
食べるということは、そんな幸せな行為であるとともに、身体の中に直接、食品を取りこむということですから非常に危険な行為でもあると私は思っています。
(ちょっと過剰な表現すぎますが・・)
「食べる=幸せ」、「大事な家族、人々」
を守るために、少しでもリスクを減らしませんか?
食中毒はこちらをご参考ください。
find a way 法律事務所
HACCPコーディネーター 石田 香玲