飲食店の人手不足の現状と改善
皆様こんにちは。HACCPコーディネーターの石田です。
今日は昨年まで飲食店で20年近く勤務していた経験の中で感じた飲食店の人手不足についてお話したいと思います。
目次
私は20年近く主に百貨店やショッピングセンターに出店するカフェ業態の飲食店に勤務していました。
在籍時は店長、SVとしての勤務期間がほとんどでした。人員管理をする立場にいましたので常に人手不足の現状を体験していました。
飲食店はとにもかくにも人手が必要なんです。
たとえばどんな業務があるかといいますと・・・
(フルサービスのお店前提ですが、)
・お客様をご案内する
・お冷をお持ちする
・ご注文を伺う
・ご注文を伺った順番に料理を作る
・出来上がった料理をお客様にお持ちする
・食べ終わったお皿をお下げする
・お冷をおつぎする
・お会計をする
・帰られたお客様のお席を片付ける
・食器を洗う、直す
・掃除をする
・お料理の仕込みをする
お客様対応だけでなく、従業員教育もお客様対応と同時に行います。
お客様がいつお呼びになるか、なにをご注文されるかわかりません。
いくつものことを臨機応変に同時に行い、かつ常に優先順位を判断することを求められます。
お客様の数にもよるとは思いますが、私が勤務していたお店は平日だと200名近く、土日祝日になると400名を超えるお客様がご来店されるお店でしたので、ホール・厨房スタッフ合わせて1日16名ほどのスタッフが必要でした。
1日に16名ということはお休みを回すなど考慮して30名近くのスタッフを抱えていました。
30名近いスタッフのうち、4名が正社員で、ほとんどがパートアルバイトスタッフだったため、固定シフトではなく、一人ひとりが入れる時間の指定があり組み合わせてシフトを作成していくことも大変でした。
そして何よりも大変だったのは短いスパンでスタッフが退職してしまうことでした。
思っていたより仕事内容がハードで数回の勤務で辞めてしまう・・サービス業とわかって応募したがGWやお盆は休みたいと辞めてしまう・・時給と仕事内容が見合わないと辞めてしまう・・・
大手企業でしたので、人員のやり取りは活発で、GWなど長期休暇は店舗がどうしてもシフトが組めないときは本部のスタッフが店舗に手伝いに行っていました。
時には課長や部長までも・・。
国内大手の信用調査機関である帝国データバンクの調べによると、飲食店スタッフの大部分を占めるアルバイトといった非正社員について、「不足している」と回答した企業は84.1%だったそうです。
(参考:帝国データバンク/人手不足に対する企業の動向調査(2019年1月))
全業種の平均が34.4%という割合であることからも、飲食業界は圧倒的に人手不足であるといえます。
私が飲食店に在籍していた期間中も人手が余って・・・などの話は聞いたことがなく、常に人員のやり取りや不足をどうカバーするかを相談していました。
私の実体験でも飲食業界は人が入りやすくまた出ていきやすい業界だと感じていました。
2 人手不足になる原因について
飲食業界はなぜ離職率が高いのか考えてみました。
飲食店は土日祝日、世間が休日になる時期がかきいれ時です。
会社勤めの友達や家族と過ごしたい、旅行に行きたいときになかなかお休みがとれないというストレスは常に付きまといます。
飲食・サービス業で勤務するつらさを一番感じる理由ではないでしょうか。
逆に平日休みだと、レジャー施設はすいていて利用しやすいとプラスに捉える方々も多いとは思いますが、休みがとりづらいということが離職の大きな要因になっているのが現実です。
私が勤務していた飲食店もそうでしたが、正社員はほんの数人でその大部分が非正社員が構成しています。
一人ひとりの雇用契約が違っているため、つぎはぎの様なシフト体制になってしまいがちです。
たとえば、Aさんは主婦であるため朝9時から13時までしか勤務できません。
Bさんはフリーターで社会保険に加入しているので長時間勤務で12時から20時までの勤務が希望です。
またCさんは学生なので授業終わりの17時から勤務希望です・・
個々の希望に加えて、飲食店はコアタイムとアイドルタイムの差が激しいことが多くあります。
ランチタイムは行列ができていてもランチが終了すれば18時のディナータイムまで閑散とするなどし、時間によっても必要な人員数の変動が大きいため、希望通りにシフトに入れてもらえないことも多いのです。
そうなると例えば学生スタッフなら安定して入れてもらえる学習塾やコンビニなどの仕事に離れていってしまうという傾向にありました。
・営業時間が長い
・人が少ないので1人がしないといけないことが多く大変
・重いものを運ばなければならない(身体的な負担)
・同時にお客様に呼ばれ、優先順位をつけるのが難しい、常に時間に追われている(精神的な負担)
・時給が安い
・共に働く先輩が怖い・・
など業務内容や働く環境に大きな負担を感じ、モチベーションを維持できず離職されることも多くあります。
ひとつの飲食店を辞めても山ほど飲食店はあります。
飲食業でアルバイトしたいのであれば条件のいいお店を探せばたくさんあるのも事実です。辞めても次見つければいいという考えから、離職しやすいという傾向もあるかと思います。
そもそもの人手不足の要因として求人を出しても応募が来ないという現状があります。
募集の時期や掲載媒体にもよりますが、募集をかけるとたくさん応募があるお店と全然応募がなく、人員の補充自体が困難なことも多くありました。
では、人手不足を解消するためにどういった対策をとっていくべきなのでしょうか。
飲食店のアルバイトの在籍サイクルは短いものとあらかじめ想定し、入れ替わりを見据えた採用を行っていくこともひとつの方法です。
繁忙期のみ短期雇用者を採用するなどの方法もあります。
短期雇用者なら必要時期のみ勤務して頂けることで人件費のコントロールにも繋がります。
1年を通した人員数の計画を作成し、早い段階で人員補充をしていくことで、人手不足にならないことにより職場環境が保たれるといういいサイクルを生み出すことができます。
もちろん飲食業にとって人件費は大きなコストではありますが、先程申し上げた定期的な採用を行い人員数を確保することで従業員の休み希望を尊重できるようになります。
休みたい時に休めることで従業員の働く意欲に繋がり、安定した雇用に確実に繋がるはずです。
従業員の働く意欲を高めていくためには色んな方法が考えられます。
・マニュアルの作成:仕事に対して理解を深めることができる
・オフザジョブトレーニングによる講習の実施:知識習得の機会になる
・評価制度:働くモチベーションに繋がる
入店したての頃に教えてもらう人により教えてもらった内容が違い戸惑った経験はないですか?
マニュアルが作成されていれば、トレーナーが教える内容が統一され、トレーニーに安心感を与えることができます。
また、評価制度があることで自身の成長が感じられたり、目標を持つことができただお給料を貰って働くだけでないモチベーションに繋がります。
土日祝日の勤務や繁忙時の勤務などはどうしたって変更できない条件です。
しかし、働く環境や採用サイクルなどはお店お店の工夫により改善できることも多々あります。
どんなお仕事にも通じることではありますが、飲食業は特にヒューマンパワーが影響しやすい業種でもあります。
衛生的な環境の創造と行き届いたサービスを実現するために人手不足の問題を少しでも改善していくことができればと思います。
他飲食店関連のコラムもご参考いただければ幸いです。
HACCPコーディネーター
石田 香玲