飲食店の人手不足を解決できる?効果的な面接とは
皆様ご無沙汰しています。
HACCPコーディネーターの石田です。
政府が令和5年5月8日にコロナウィルスの感染症法上の分類を5類に移行して以降、飲食店にはかなりお客様が戻り、繁盛していますね!
いいことである半面、飲食店の人手不足はかなり深刻化しているようです。
飲食店スタッフの大部分はアルバイト等の非正社員が占めています。
国内大手の信用調査機関である帝国データバンクの調べでは、非正社員が「不足している」と回答した企業は85.2%だったそうです。
(参考:帝国データバンク/人手不足に対する企業の動向調査(2023年4月))
人手不足を解消しようと、お店側はアルバイトを採用しますよね。
採用する際に、とにかくたくさんシフトに入れることを重視して採用してみたら、「あら?思ったような人でなかった・・」ということも多々あると思います。
私は、20年近く、某大手飲食関連会社のカフェ業態で、店長、スーパーバイザーをしており、たくさんのアルバイトスタッフの採用に関わってきました。
採用したスタッフがすぐに辞めてしまったこと、エースに成長してくれたこと、たくさんの思い出がありますが、多くのスタッフを面接する中で、長く勤務してくれる人材を見極めるコツをつかみました。
この記事では、私の経験を踏まえ、面接での効果的な質問やNG項目を解説いたします。
目次
定番の質問ではありますが、自分をどのように表現するのか、人によって全然違います。個人的に一番興味深い質問項目です。
自己紹介だけで採用・不採用を決めてしまうことはほぼないですが、自分に興味を持ってもらえるように話す工夫をしている方は、お客様への商品説明に長けていそうだな・・などと判断することもできます。
ほとんどの面接に出てくる質問だと思います。
志望する動機には、応募者の価値観が良く出ています。
「おしゃれなところで働いてみたかった」
「ゆっくり過ごせるこのお店の雰囲気が好きだから」
「お料理がおいしくて大好きだから」
このような理由を話す応募者は、お店のイメージを知っていて、なんとなくでも接客スタイルや料理を理解しています。一方で、お店の実情(裏方)と応募者の印象の乖離が大きいと思うこともあります。そのような場合には、あらかじめ、実情を面接の時点で話しておくことが、早期退職を回避するためのポイントです。
一方で、
「求人サイトで募集が出ていたから」
「家が近所で勤務しやすそうだから」
「時給がいいから」
といった志望動機の場合も多く存在します。
個人的な印象ではありますが、家が近所であることが1番の志望動機であれば、他のお店にアルバイト募集が出れば、そちらに行ってしまうのだろうなと思ってしまいます。明確に当店を応募した理由がない場合は他の質問で、さらに応募者の特性を見極める必要があります。
アルバイト=お小遣いや生活費を稼ぐ
ということは重々承知の上での質問です。
働くことでお金以外の何かを習得しようとしているなど、向上心を持っているかどうかを聞き出すことができる効果的な質問です。
自分の長所と短所を話す際には、実際の経験を交えて話すことが多いです。
「前のアルバイトを3年続けていたので、自分には忍耐力があります・・」
「以前の職場でレジ締めを任されていたので、責任感が強い方だと思います・・」
など、他の職場で勤務していた際の役割りや応募者の特性を聞き出しやすい質問です。
短所に関しては、ホール(接客)を希望してきたにも関わらず、
「初めて話す人とは緊張で手汗がとまらなくなります・・」
「人と話すことが苦手です・・」
と言われたりすると、大丈夫なの?と思ってしまうこともありました。笑
そういう場合は、「人と話すことが苦手なのに、なぜ接客業をしてみたいと思ったんですか?」とさらに深堀りした質問をしていくと思いのほか、応募者の本当の特性にたどり着けることもあります。
長所や短所は「向いている・向いていない」を判断するために聞いている質問ではなく、応募者の特性を知るための質問ということを意識してみましょう。
客観的に自分を評価できているかを確認できる質問です。
飲食店ではたくさんの人と関わりながらお仕事をします。応募者自身が人からどう見られるかを冷静に把握できていることも重要なポイントです
毎週の繫忙(ランチタイムや土日祝日など)以外に、1年を通じて特に人手が必要な時期があると思います。直前になって、「シフトに入ってほしい」と言っても思い通りには入ってもらえません。
面接の段階で、この時期だけは必ずシフトに入ってもらわないと困るということをきちんと伝えておきましょう。
飲食店はお客様の動向に左右されることがあります。残業が退職理由になることも多いので、残業の可能性を伝えておくこと、残業が可能であれば具体的に何時まで可能か確認しておくことも大切です。
上記質問に加え、必要であれば前職や(前職の無い方は)部活動、学校生活で一生懸命に取り組んだことや挫折したことなどの質問で、応募者の価値観や特性を引き出すようにしましょう。
採用選考では、「応募者の基本的人権を尊重すること」「応募者の適性・能力のみを基準として行うこと」この2点を基本的な考え方として実施することが大切です。
そのため、面接では応募者の適性・能力とは関係のない事柄、つまり業務に関係しないことは聞かないようにしましょう。
具体的に質問NG項目は以下の通りです。
<本人に責任のない事項の把握>
・本籍・出生地に関すること (注:「戸籍謄(抄)本」や本籍が記載された「住民票」を提出させることはこれに該当します)
・家族に関すること(職業、続柄、健康、病歴、地位、学歴、収入、資産など)
・住宅状況に関すること(間取り、部屋数、住宅の種類、近隣の施設など)
・生活環境・家庭環境などに関すること
<本来自由であるべき事項(思想・信条にかかわること)の把握>
・宗教に関すること
・支持政党に関すること
・人生観、生活信条などに関すること
・尊敬する人物に関すること
・思想に関すること
・労働組合(加入状況や活動歴など)、学生運動などの社会運動に関すること
・購読新聞・雑誌・愛読書などに関すること
「尊敬する人は誰ですか?」というのは採用面接で良く聞かれる質問事項ですが、業務に関係ないので、うっかり聞かないように注意しましょう。
他にも当たり前のことではありますが、面接の時間を守らない、横柄な態度などは応募者に悪印象を与えてしまいます。
面接を約束したものの、思ったよりお客様の入りがよく、採用担当者が、業務から抜け出せないという場面は多いとは思いますが、応募者もお客様と同じです。約束した時間を守れるように人員配置をするなどの工夫をして、面接の時間を厳守するように気を付けましょう。
私は、某大手飲食関連会社のカフェ業態で、店長、スーパーバイザーとして長く勤務していた経験があります。
なので、アルバイトの採用面接は、数えきれないほどの回数を担当させていただきました。
飲食店はともかく人手が必要です。
人の体内に入る食品を扱う以上、安心安全で衛生的な環境の実現にも人手は必須です。
そのために、少しでも長く勤務してくれる方を採用する面接を実施することがとても重要なのです。
採用面接では、応募者がリラックスして臨めるような環境を作るようにしましょう。
採用担当者が笑顔で応対することや、応募者のことを知りたいという気持ちで質疑応答することがとても大事です。
募集をすれば人が集まるという時代ではなくなってきています。
採用担当者の面接スキルを向上することが案外、人手不足解消のポイントかもしれません。
皆様のご参考になれば幸いです。
過去記事「アフターコロナ 飲食店の人手不足の今」もご参照ください。
find a way 法律事務所
HACCPコーディネーター 石田 香玲