本業先vs副業先 過労死の責任を負うのはどっち? - 大阪市で労使、飲食、M&Aに関する相談は「findaway法律事務所」へ

 

本業先VS副業先 過労死の責任を負うのはどっち?


 

弁護士・中小企業診断士の荒武です。

 

働き方改革の推進によって、副業を容認する企業が増加しています。

 

厚生労働省も、「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を策定し、国として副業を推進しています。

 

しかし、まだまだ副業容認に踏み切れない会社が多いようで、中小企業診断士の仲間には、勤務先が副業を禁止しているために、思うように企業支援に取り組めない方がたくさんいます。

 

当事務所では、副業制度導入セミナー、副業制度導入支援などを行っております。

副業容認、副業制度導入に関するご相談をたくさんいただくのですが、ご相談の中で、

「従業員が過労で倒れた場合、副業を認めていた会社が責任を負わないか」

という質問を受けることがあります。

 

「社労士に、過労で倒れた従業員から損害賠償請求を受けるリスクがあるから、導入は現実的ではないと言われた」と言うご相談者もいました。

 

当然、本業先でのフルタイム勤務に加え、副業先でも仕事をするとなると、労働時間は長くなります。

しかし、勤務時間外で何をするかは従業員の自由です。

その自由な時間に、多くの会社が口出ししているという現状、何か違和感がありませんか?

 

 

長時間労働で過労死や心身の不調が起こった場合、本業先は責任を負うのでしょうか?

 

この記事では、本業先が従業員に対して負う安全配慮義務について解説しています。

また、結局、副業を容認すべきなのかどうかについての考察を進めています。

 

1 会社が負う安全配慮義務とは?

 

従業員が働いてくれたら(労務を提供してくれたら)、会社は賃金を支払う義務を負います。

労働契約とは、そういう契約です。

 

しかし、労働は心身に負担をかけるものですので、従業員の健康が害されることもあります。

そのため、法律は、会社に対し、従業員の生命、身体などの安全を確保するため、必要な配慮をすることを求めています

(労働契約法5条)。

 

このように、会社が従業員の安全に配慮する義務を安全配慮義務といいます。

 

例えば、以下のような場合、会社に安全配慮義務の違反が認められます。

その結果、会社は従業員に対し、損害賠償責任を負います。

 

・危険な作業を行う従業員に適切な指導をしなかった場合

・従業員に過剰な長時間労働を命じていた場合

・過剰な長時間労働を黙認していた場合

 

ただし、会社が負う安全配慮義務の内容は、従業員をいかなる災害からも保護するというものではなく、災害の回避、防止に向けて適切な措置を講じることにとどまります。

 

 

 

 

2 長時間労働に伴う健康被害の責任を負うのは?

 

本業先であれ、副業先であれ、従業員と労働契約を締結している以上、安全配慮義務を負います。

 

本業先にとってみれば、副業先での仕事は労働時間外の活動です。

そう考えると、従業員が資格取得に向けて勉強していたり、趣味でDJ活動をしているのと同じです。

 

しかし、安全配慮義務違反というのは、結果発生を予想でき、それを避けることができたのに、適切な措置を講じなかったことの責任です。

そのため、副業先での仕事による負荷が健康状態に影響していることを知りながら、本業先での業務を継続させた場合、安全配慮義務違反に問われることもあり得ます。

 

つまり、本業先も、副業先を含めた長時間労働に伴う健康被害の責任を負うことがあるのです。

 

 

 

 

3 本業先で取り得る対策

 

⑴ 安全配慮義務の内容

 

安全配慮義務を負うとしても、安全配慮義務を尽くしていれば、本業先が責任を負うことはありません。

 

本業先が負う安全配慮義務の内容は、以下のようなものです。

 

① 副業先の労働時間や作業負荷を把握する

② それが過剰である場合には、副業先での労働時間の削減や負荷の軽減等を指示・指導する

 

一般的には、ここまででよいとされています。

副業先の労働時間や作業負荷を把握する方法としては、従業員からの自己申告でOKです。

それ以上に、副業先との契約書などの書類の確認までは必要ありません。

 

仮に、従業員が申告しなかったり、ウソの申告をしていた場合、本業先としては結果発生を予想できないので、責任を負いません。

 

ただし、明らかに従業員に疲労の蓄積が見てとれるという場合には、踏み込んだ確認が必要です。

 

 

 

⑵ 具体的な対策

 

具体的な対策としては、以下の書類を整備して、従業員に周知します。

 

① 副業規程(就業規則に盛り込んでもOK)

② 副業届または副業許可申請書(雇用型と個人事業型の2種類)

③ 守秘義務保持に関する誓約書

④ 副業状況報告書

 

 

①は、副業の範囲、会社への届出内容、従業員からの報告義務、禁止(許可取消)事由などを記載します。

違反があった場合に懲戒処分の対象となることも記載しておき、懲戒処分もしっかりと行うようにしましょう。

 

②には、従業員に申告させる内容を明記しておきます。

また、副業をする上での遵守事項も記載しておきましょう。

 

③は、会社が特に秘密保持の要請が強い事業を行っている場合に整備しておきます。

 

④は、特に慎重に管理する場合に利用する書類です。

月ごとに副業の労働時間を記載して提出してもらいます(エクセルファイルで作成します)。

本業先の時間外労働(1日8時間超、週40時間超の労働)が多い場合には、副業先を含めた労働時間を月単位で把握しておく必要があります。

 

ここまでの対策を取っていれば、よほどのことがない限り、本業先が安全配慮義務違反を問われることはありません。

最初に書類を整備してしまえば、それほど手間がかかるものではありません。

 

 

副業を制限すべき場合や労働時間管理の具体的方法、副業ルール違反時の対応については、以下の記事を参照してください。

 

本業企業における副業容認時の留意事項

 

【労務】副業ルールに違反した従業員への対応

 

 

 

 

4 リスクがあるから副業を容認すべきでないという専門家

 

以上のとおり、ルールを作って、書式を整えて運用すれば、副業容認にほとんどリスクはありません。

 

時間外割増賃金を支払うのは、基本的に副業先ですので、人件費が増える心配もありません。

 

にもかかわらず、冒頭で述べたように副業容認に慎重な専門家が多いことは非常に疑問です。

 

士業は責任を負いたくないので、リスクがあることはやめるように進言するのが楽です。

何も変えなければ、目の前のリスクは回避できるかもしれません。

しかし、変化の激しい時代に「変化しない」という選択をすることは、10年、20年という長いスパンで考えると、むしろリスクの高いことです。

 

専門家は、「できない理由」を考えるのではなく、「できる方法」を考えなければなりません。

そのためには、専門家が自身の専門領域にこだわることなく、経営全般を深く考える必要があります。

 

 

 

 

5 まとめ

 

この記事では、副業容認時に、本業先が安全配慮義務違反を問われない方法について解説しました。

 

従業員の定着率向上を図り、新入社員に選ばれる会社になるため、是非、副業容認を検討してください。

 

当事務所では、以下のようなサポートを提供しています。

 

・副業制度導入セミナー

・副業容認に関わる書式の作成、リーガルチェック

・就業規則その他社内規程の作成、リーガルチェック

 

また、顧問契約を締結していただきますと、各種書式のリーガルチェック、作成、提供を顧問料の範囲内で行います。

 

会社で副業容認を検討しているという方は、問合せフォームまたは事務所LINEアカウントよりお気軽にお問い合わせください。

 

 

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弁護士・中小企業診断士 荒武 宏明