飲食店で起こるクレームとカスハラ対策 - 大阪市で労使、飲食、M&Aに関する相談は「findaway法律事務所」へ

 

【飲食店で起こるクレームとカスハラの対策について】


皆様こんにちは。

HACCPコーディネーターの石田です。

 

 

私は、某大手飲食チェーンで西日本にある店舗を巡回しつつ管理するSVの仕事をしていました。

クレームというのはまあ、起こすつもりはなくても起こってしまうものです。

 

注文を聞きにこない・・、

料理がメニュー写真と全然違う・・・、

店員が感じ悪い・・・

 

 

店舗側の不注意で発生するものから顧客による理不尽なクレームまで、接客に携わっていれば避けては通れない道です。

 

この記事では、飲食店でクレームが発生した場合の適切な対応方法とカスハラの対策を解説します。

 

1 飲食店で起こるクレームの種類と対応方法

 

(1)商品に関するクレーム

 

飲食店で発生するクレームで一番ウェイトが大きいのは商品に対するものです。

 

【具体例】

・髪の毛や虫、パッケージの端切れなどの異物混入

・料理の量が少ない

・料理の温度がぬるい

・料理の味がいつもと違う、薄い、濃い

・料理に入っているはずの具材が入っていない

・アレルギーや嗜好で抜いてほしいといった具材が抜かれていない

・料理が盛られている食器やカトラリーが汚れている

・料理が出てくる時間が遅い

・サラダなど野菜が傷んでいる

・料理が生焼け

・あの人より自分の方が早く注文したのに来るのが遅い

 

商品に対するクレームが発生した場合は、顧客が何に対し、不満を持っているのかをしっかり最後まで聞き取りましょう。

対応方法のポイントは以下の通りです。

 

① 顧客と話しているその場面で、料理に不備が認められる場合

→真摯に謝罪をし、まずは顧客の身体や気分は大丈夫か伺います。

顧客が問題ないようなら、料理の作り直しを提案します。

 

② 料理の温度や味など視覚上で確認できない場合

→申し出に恐縮しつつ、確認させていただきたい旨お伝えし、料理を一旦厨房まで引き下げましょう。

料理の状態を確認し、何が悪かったのか(調理方法なのか、レシピ通りの仕込みができていなかったのかなど)を確認した上で、顧客に不備のある商品を提供してしまった経緯を説明し、真摯に謝罪します。

 

③ 衛生面のクレームの場合

→不快な思いをさせたことを心より謝罪します。

作り直しが良いのか、他の料理に変更されるのか、注文自体をキャンセルされるのかなど、顧客の気持ちに寄り添った提案をします。

 

顧客からクレームを受けると店舗側はあわててしまい、なんとかクレームを収めようと、商品の作り直しを提案しがちです。

 

③の衛生面に対するクレームや異物混入などの場合は、とてもセンシティブなため、作り直せばいいというものでもありません。顧客の気持ちに寄り添った解決案を提案するようにしましょう。

 

ここで間違えてはいけないのは、顧客の気持ちに寄り添うということは、顧客の言いなりになることではありません。

 

 

 

(2)接客に対するクレーム

 

商品に対するクレームと比較すると、対応の難易度がぐっと上がるのが接客に対するクレームです。

顧客の言い分に対し、言い訳せず、一旦最後まで不満を聞き取りましょう。

 

その上で、謝罪をする場合は、謝罪が必要な部分を言葉で明確に伝えるようにしましょう。

 

ありがちなのは、クレームを早くおさめようと、事実を確認せず、なんでもかんでも顧客の言う通りに認め、謝罪をしてしまうことです。

クレームの内容によっては、従業員では対応できない場合もあります。その場合は責任者にすぐ報告し、顧客の対応を交代するようにしましょう。

 

一般的なクレームは従業員が真摯な態度で、顧客の不満を聞き取り、不満を感じた部分の改善案を提案することで解消されます。しかし、中には店舗側が真摯な態度で謝罪しているにもかかわらず、理不尽な要求をしてくる場合があります。

 

いわゆる近年増加しているカスタマーハラスメント、カスハラです。

 

 

 

 

2 カスタマーハラスメント(カスハラ)とは

 

カスタマーハラスメント(カスハラ)とは、顧客が企業や店舗に対して理不尽なクレーム・言動をすることをいいます。

たとえば、事実無根の要求や法的な根拠のない要求、暴力的・侮辱的な方法による要求などです。

 

ドラマなどで「土下座しろ」などと要求しているシーンを見たことがありませんか?あれはまさにカスハラです。

 

 

 

 

3 カスハラの現状

 

飲食店経営者・運営者を対象とした飲食店ドットコムのインターネット調査では、回答者の64%がカスタマーハラスメントにあった経験があると回答しています。

 

恐るべき数字です・・。

 

同調査の中で、多かったカスハラの内容は、

・必要以上に説教をされた(56.4%)

・備品を持ち帰られた(31.2%)

・長時間居座り続けられた(30.9%)

という順序でした。

 

店舗側にミスがあり、そのことについて説教をされたり、苦情を言われるのは、ある程度仕方ないとは思いますが、何時間も同じことを言われ続けるのは、カスハラにあたります。

 

 

 

 

4 飲食店が取るべき5つのカスハラ対策

 

(1) クレームの初期対応を徹底する

 

カスハラに限らず、クレームは発生した時にどれだけ迅速、丁寧に対応できるかで結果が大きく変わってくるものです。

カスハラに発展する可能性を少しでも取り除くことができるよう、クレーム初期対応を徹底していくことが大切です。

 

【対応例】

・顧客の言い分を遮らず最後まで聞き取る

・顧客が何に対し怒っているのかを明確にし、対象の部分のみを謝罪する

・状況が把握できていない段階では、非を認めた発言は避け、事実確認後に、過失の程度に応じた謝罪をする

・顧客が興奮している様子であれば、場所を変え、可能であれば複数人で対応する

・顧客が感情的になっても丁寧な対応で冷静に対応する

 

 

 

(2) 企業のカスハラに屈しない姿勢を明示化する

 

企業のトップが、カスハラに屈しないという基本方針や姿勢を明確にすることで、悪質なクレーマーに対する抑止力になります。

また、従業員は会社に守られているという安心感を持ちながら、現場で自信をもって対応することができます。

 

 

 

(3) カスハラの明確な判断基準の設定、周知する

 

「クレームかカスハラか」

現場の従業員が一番困るのが、判断をしないといけない場面です。

 

顧客が要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相当な場合がカスハラに該当します。具体例は以下の通りです。

 

【具体例】

・身体的な攻撃(暴行、傷害)

・精神的な攻撃(脅迫、中傷、名誉棄損、侮辱、暴言)

・土下座の要求

・1時間以上の居座り

・継続的で執拗な言動

・従業員に対しての個人的な攻撃、要求(身元証明を出せなど)

・威圧的な脅迫(ネットでいいふらすぞなど)

・動画の撮影(勝手に撮影する)

・差別的な言動

 

企業や店舗内でカスハラの明確な基準を設定しておくことで、従業員が自信をもって対応することができるようになります。

 

 

(4) カスハラ対応マニュアルの作成する

 

企業や店舗ごとにより受けやすいクレームの種類があるはずです。

顧客からの迷惑行為、不当要求の対応マニュアルを作成し、社内研修で活用しましょう。

厚労省では、「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」を作成していますのでご参考ください。

 

 

 

(5) カスハラを受けた従業員が相談できる部署を設置する

 

カスハラを受けた従業員が気軽に相談できるように相談窓口(相談担当者)を設置しましょう。

 

また、相談対応者は相談者(従業員)の心身の状況や受け止め方など認識にも配慮しながら慎重に相談に応じるようにしましょう。

 

社内のみで解決することが難しいケースも考えられます。クレームが発生した際にすぐ相談できる顧問弁護士がいると安心です。

 

 

 

 

5 まとめ

 

今回は飲食店で発生しているクレームの対応方法とカスハラに対する対策を解説しました。

クレームが発生した場合、まずは顧客の言い分をしっかり聞き取り、不満の対象を明確にしましょう。

不満の対象を明確にしておくことは、ゆくゆくカスハラに発展していく防止策にもなります。

 

顧客の不満の対象に対しての謝罪は誠意をもって行うべきですが、理不尽な要求が出てきた場合に従業員が毅然と対応できるよう、対応マニュアルを用意し、社内研修などで周知していくことが大切です。

 

クレーム対応に不安がある場合は、外部機関(顧問弁護士など)と連携できるような体制をとっておきましょう。

 

クレーム対応に困っている、不安があるという方は、問合せフォームまたは事務所LINEアカウントよりお気軽にお問い合わせください。

 

顧客の服を汚してしまった場合の対応については、以下の記事をご参照ください。

【飲食店】お客様の服を汚してしまった場合の対応

 

Instagramではわかりやすい法律の解説と美味しいもの・弁護士の日常について発信しています。

 

 

HACCPコーディネーター

石田 香玲