【飲食店】契約書のリーガルチェック、ちゃんとやってますか??
弁護士・中小企業診断士の荒武です。
食材の仕入れ、店舗の賃貸借、従業員の雇用、
飲食店を営む上ではたくさんの契約を締結することと思います。
ところで、契約書はきちんと交わしていますか?
ネットで拾った契約書をそのまま使ったり、相手方が渡してきた契約書にそのままサインしたりしてないですか?
契約書のチェックより、料理を提供して、お客さんに喜んでもらって、売上を上げるほうが楽しいですよね。
でも、契約書のリーガルチェックを怠ると、思わぬトラブルに発展し、本業に集中できなくなってしまうことがあります。
この記事では、飲食店における契約書のリーガルチェックの重要性と主要なチェックポイントについて、解説します。
目次
契約書のリーガルチェックとは、
・契約書に法的なリスクはないか
・契約書に不利な内容が含まれていないか
・契約書が取引内容に合っているか
を弁護士がチェックすることです。
契約は口頭でも成立します。
しかし、口頭では契約の具体的な内容を決めることができません。
仮に具体的な内容を決めたとしても、後で言った言わないで揉めることがあります。
そのため、どのような約束をしたのか契約書を作成して明確にしておくことが重要です。
契約書を作らない場合、法律(主に民法)が適用されます。
例えば、食材の仕入れは民法では売買契約に分類されます。
民法では、「商品と代金はお互い同時に渡す」ことになっています。
このルールを「月末締めの翌月末払い」に修正するために契約書を交わします。
つまり、民法のルールを契約書で修正することができるのです。
ということは、取引の相手方が「この契約書でお願いします」と言ってきたときに、きちんと中身を確認しないと、民法よりも不利な内容にルールが変更されているかもしれません。
取引の相手方が作った契約書は、程度の差こそあれ、相手方に有利な内容に作られていることがほとんどです。
それをスルーして、そのまま印鑑を押すのは非常にリスクのある行為です。
このリスクを排除するのが契約書のリーガルチェックなのです。
継続的に食材等の仕入れを行う場合、取引基本契約書を交わして、そこに書かれた条件を前提に個別に発注することが多いです。
取引基本契約書では、以下の点を特にチェックしましょう。
① 個別の契約の成立時期
お店から注文して、承諾(FAXやメールの返信など)があった場合に契約成立、が基本です。
でも、注文書を出しているのに返事がなければ不安ですよね…。
このように「相手方の承諾がない場合にどうなるのか」を決めておきましょう。
「2営業日以内に断りの連絡がなければ、承諾したものとみなす」といったルールが一般的です。
② 代金の支払時期、方法
1ヵ月に複数回の取引がある場合、締め日と支払日を記載しましょう。
これを決めておかないと、納品のたびに代金を支払わないといけません。
③ 商品の納品、検査方法
納品方法や納品後の検査方法(検査時期や期限)を定めましょう。
検査不合格の場合(数が足りない、汚れているなど)の対応も決めておきましょう。
④ 契約不適合責任
契約に合わない物が納品された場合(腐敗、数量不足など)に売主が負う責任を契約不適合責任と言います。
契約不適合責任として、代わりの商品や不足分を何日以内に納品する、代金を減額する、飲食店に生じた損害を賠償するなどのルールを決めておきます。
仮に、この条項が無くても、売主は民法に基づいて契約不適合責任を負います。
ただし、契約の定めで、売主が契約不適合責任を負わないことにすることもできますので、飲食店側が民法よりも極端に不利な内容になっていないかチェックしましょう。
⑤ その他
契約期間、契約の解除事由、契約終了後の措置など、重要な部分を一通りチェックしましょう。
店舗の賃貸借契約書は、仲介業者や貸主から受け取ったものにそのまま署名捺印することが、特に多いようです。
以下の点は、必ずチェックしましょう。
①普通借家か、定期借家か
定期借家とは、予め期間を定めて賃貸借契約を交わすことです。
定期借家だと契約の更新がありません。
そのため、契約期間の満了時には、貸主がOKしない限り、退去しなければなりません。
仲介業者が入っている場合は、「定期借家です」と教えてくれますが、貸主と直接契約する場合には気を付けましょう。
②使用目的
例えば、「事務所」と書いてある場合に飲食店営業をすることはできません(やると契約を解除される可能性があります)。
また、飲食店営業を予定している場合に、「カフェ」、「軽飲食提供可」などと記載されていると本格的な料理を提供できないことがあります。
セントラルキッチンとしての利用が、「使用目的:飲食店」に含まれるのかといった議論が生じる可能性もあります。
将来的にどのような事業の拡大があり得るのかを吟味し、その事業をカバーできる記載になっているかチェックしましょう。
③修繕義務を負うのは誰か
貸主は、借主が建物を使用するのに必要な修繕を行う義務があります(民法606条1項)。
居抜き物件(設備や什器備品が付いたまま)の場合、貸主が修繕義務を負わない契約になっていることが多いです。
初期費用を抑えられる居抜き物件は魅力的ですが、柱や天井などの構造部分まで、何でもかんでも賃借人が負担する契約になっていないかは確認しておきましょう。
貸主、借主のどちらが修繕費用を負担するかでもめたり、現場が混乱することは多いですので、引き継ぐ設備や什器が多い場合には一覧表を添付して負担者を決めておくこともあります。
④解約手続
解約前の告知期間が長すぎると、閉店時の費用負担が大きくなります。
事業用の賃貸借契約であれば、解約時には3ヵ月~6ヵ月前に告知するものが一般的ですが、1年前など極端な期間になっていないか確認しましょう。
⑤原状回復義務の内容
居抜きで借りたのに、スケルトン返し(内装などを全て撤去して明け渡す)になっていないでしょうか。
そのような契約内容になっていることは多いので(修正にも応じてくれないのが通常です)、明渡時には負担が大きいことは予め認識しておきましょう。
また、原状回復工事を貸主が指定することになっている場合もあります。その場合、明渡し時の原状回復工事を借主が相見積もりを取ることができませんので、要注意です。
⑥特約条項
賃貸借契約書の末尾に「特約条項」などのタイトルで、その契約特有の追加条項が定められることがあります。
ここに不自然なことが書いてあることが多いので、「特約条項」があれば、よく読み込んで
おきましょう。
従業員の雇用も契約ですので、雇用契約書をしっかり交わしておく必要があります。
実は、飲食店様からのご相談は労務に関するものが一番多いです。
ご相談時に弁護士が最初に確認するのは、就業規則はどうなっているか、雇用契約書はどうなっているかです。
雇用契約書がない場合や労働基準法で必要とされていることが書いていない場合には、希望するような解決が難しいことがあります。
・従事する業務
・就業場所
・始業・終業時間、休憩時間
・賃金
・退職、懲戒に関する事項
などは、飲食店側が意図する内容になっているか必ずチェックしましょう。
特に賃金はトラブルの元です。雇用契約書の記載が原因で高額の未払残業代請求を受けるということがよく起こっていますので、重点的にリーガルチェックを受けましょう。
契約書のリーガルチェックをスポットで受け付けている法律事務所は多いです。
以下のような手順で進むのが通常です。
・法律相談の予約をする。
・弁護士と面談し、自社の事業内容、取引相手との関係性、契約の内容等について説明する。
・弁護士が契約書のデータを確認し、必要な追記修正やコメントを加える。
・弁護士がリーガルチェック後の契約書をクライアントに提示する。
当然ですが、リーガルチェックは契約実務に精通する弁護士に依頼しましょう。
当事務所にスポットで契約書のリーガルチェックをご依頼いただく場合の費用は、契約書1通あたり10万円(税別)~となっております。
事業を行う上で、契約締結は継続的に発生します。
そのため、弁護士との顧問契約にはリーガルチェックが含まれていることが多いです。
当事務所の顧問契約は、原則として月額5万円(税別)で、月間のリーガルチェック数の上限はありません。
また、契約書の雛型提供も顧問契約に含まれています。
※飲食店限定の法律顧問プランには契約書のリーガルチェックは含まれません。
スポットでご依頼いただく場合、事業内容や契約に至る背景等を一からヒアリングしなければなりません。
一方、顧問契約いただいているクライアントについては、事業内容等の前提情報を弁護士が把握しているので、契約書のリーガルチェック費用が割安になります。また、特殊な契約書でなければ、ご依頼いただいた当日、遅くとも翌営業日にはリーガルチェック済の契約書を提供しています。
弁護士は、何かトラブルが発生したときに相談するものと思っていませんか?
当然ですが、トラブルは未然に防ぐほうが、コスパとタイパがよいです。
契約の相手方から契約書を示されたとき、現在の契約書の雛型でよいのか不安になったとき、弁護士に契約書のリーガルチェックを依頼しましょう。
当事務所では、以下のようなサービスを提供しておりますので、問合せフォームまたは事務所LINEアカウントよりお気軽にお問い合わせください。
・契約書のリーガルチェック、作成
・利用規約のリーガルチェック、作成
・契約締結に向けた交渉
・法律顧問契約(契約書のリーガルチェック、契約書の雛型の提供を含みます)
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弁護士・中小企業診断士 荒武 宏明